「4WD=三菱」というイメージもありますが、三菱の技術とはどのようなものなのでしょうか。今回は、冬の北海道で雪上試乗してみました。
■雪道で「トライトン」と「アウトランダーPHEV」に乗ってみた!
三菱が2024年に発売した「トライトン」と「アウトランダーPHEV」。
その2台には三菱がこだわり続ける「四輪駆動制御技術」が搭載されています。
「4WD=三菱」というイメージもありますが、三菱の技術とはどのようなものなのでしょうか。
今回は、冬の北海道で雪上試乗してみました。
2024年2月15日に発売された1トンピックアップトラックのトライトンは、SUV並みの快適性にピックアップトラックに求められる堅牢性、実用性を兼ね備えたモデルです。
2023年7月からタイで販売開始され、以後は世界約100か国に投入。日本市場への投入は12年ぶりで、ボディタイプはダブルキャブ、駆動方式は4WDのみが販売されています。
グレードは、標準仕様の「GLS」と、各部分に加飾が施された上級仕様の「GSR」を用意。
パワートレインは、新開発の2.4リッターディーゼルエンジンを搭載し、6速ATを組み合わせています。
そして4WDシステムは、三菱独自の「スーパーセレクト4WD-II(以下、SS4-II)」を採用しています。
SS4-IIとは、三菱の名車「パジェロ」でも採用していたセンターデフ付フルタイム4WDとパートタイム4WDのメリットを持ち合わせたシステム。
三菱ならではの特徴としては、前後40:60配分のトルク感応式センターデフを用いた「4H」というモードを設定していることで、4WD車に特有のタイトコーナーブレーキング現象(乾燥路で大きな操舵をするとブレーキがかかったような状態になること)が発生することなく、フルタイム4WD走行が可能です。
またトライトンには、「4H」以外に後輪駆動の「2H」、センターディファレンシャル直結の「4HLc」、更によりローギヤの「4LLc」というモードがダイヤル式のセレクターで簡単に選択可能となっているのもポイント。
そしてもう1台が2024年10月30日に大幅改良したアウトランダーPHEVです。
三菱の電動化技術と四輪制御技術の粋を集めたフラッグシップモデルで、現行型は2021年12月に登場しました。
今回の大幅改良では、見える部分において内外装デザインの変更や機能追加による質感の向上。
さらにヤマハと共同開発したオーディオシステムを全グレードに採用しています。
また走りの部分では、主に駆動用バッテリーを刷新することで、PHEVならではのEV航続距離の伸長や加速性能を向上。
同時に「足回りや各制御なども見直している」と三菱は言います。
そんなアウトランダーPHEVには、「スーパーオール・ホイール・コントロール(以下、S-AWC)」が採用されています。
S-AWCの始まりは、1987年に発売されWRC(世界ラリー選手権)で活躍したスポーツセダン「ギャランVR-4」で、同車の三菱独自の四輪制御技術開発コンセプト(思想)「AWC」がきっかけです。
AWCは、大地を俊敏に駆け回るチーターのように4本の足(タイヤ)を駆使することをイメージして形作られました。
具体的には、四輪のタイヤ能力をバランスよく最大限発揮させることで、様々な路面でもドライバーの思い通りにアクセル・ハンドル・ブレーキの操作が行え、意のままの操縦性と卓越した安定性を実現するという考え方です。
なおAWCは常に進化を続けており、2007年に登場した「ランサーエボリューション X」では現在のS-AWCへと名称が変更。
四輪制御のAWCコンセプトを実現する「車両運動統合制御システム」へと発展したのです。
S-AWCでは前後駆動力配分(4WD)と左右トルクベクタリング(AYC)、四輪ブレーキ制御(ABS&ASC)の3つのサブシステムを統合制御。
具体的には、ドライバーの操作と車両状態をセンサーで検知し、前後の駆動力配分とブレーキ制御量を決定します。
そのブレーキを制御するAYCとASC、ABSを統合し、左右輪間の駆動力と制動力を制御。
さらにアウトランダーPHEVでは、ツインモーター4WDにより、前後輪の駆動力も制御することで、様々な状況でドライバーの操作に忠実な車両挙動を実現し、誰もが安心して気持ち良くドライブできることを可能にしたのです。
なおアウトランダーPHEVには、このS-AWCに加えて、環境に合わせた7つの走行モード(ノーマル・エコ・パワー・ターマック・グラベル・スノー・マッド)を設定することで、より路面に適切な制御を行っています。
■では実際に「トライトン」&「アウトランダーPHEV」は、乗るとどんな感じなの?
今回の雪上試乗では、可能な限り三菱の4WD性能を体感するため、クローズドコースで行われました。
まずトライトンに乗り、「こんな道、日本では味わえない」というような、バンクがきつく路面も凹凸があり、急勾配を組み合わせたコースを走ります。
さすがに後輪駆動の2Hで走るのは怖いので、推奨された4H(トルク感応式センターデフ4WD)でスタート。
最初の直線下り坂から右バンクコーナー、激しい凹凸路などを走っていきますが、驚くのはその乗り心地。
もちろん路面が荒れているなりの揺れは感じますが、しっかりと路面を捉えて走っているため不安には感じません。
そして、急勾配の山を登っていきます。登る途中で一旦停止してからの再発進は、さすがに4Hでも難しく、ここで4LLcに変えて登っていきます。
その後も様々なモードを試しながら悪路を走っていきますが、段々と余裕もでき、運転が上手くない筆者でも、三菱独自の4WDのおかげで「悪路が楽しい」と思えるほどに。
次にアウトランダーPHEVです。こちらは基本は平坦なコースですが、所々急なコーナーが用意されています。
走行モードをスノーにして、いざ走り出しますが、出だしから「なんでこんなに安定して走るの?」という感想が。
もちろん前述のS-AWCやツインモーター制御の効果なのですが、2トン近い重さのクルマがこれほどまでに滑りやすい道を意図通りに走っていくというのはやはり驚きです。
コースの所々では凍っている路面もあり、タイヤの性能限界を超えて滑ることがありましたが、滑ったあとにクルマが安定するまでが早く、不安はありません。
次に走行モードをグラベルにして走ってみます。
グラベルでは、スノーよりは軽やかな印象となり、滑る場面も増えます。
そのため多少、「楽しい走り」がしたいという人であれば、むしろ滑らせながら走るということも可能です。
ただし、ある程度の限界までくればS-AWCの制御により、助けてくれます。
今回は、スノーとグラベルを乗り比べましたが、大きな違いはスノーでは「いかにクルマを滑らせないか」を重点において、滑る前にアクセルやブレーキなどを制御して「安心・安全」な走り方に。
いっぽうグラベルでは、どちらかというとぬかるみに入って抜け出せなくなることなどを想定して、「滑らせて脱出」という走り方になっているようでした。
今回はクローズドコースという特殊な環境で、限界値を試すように走りましたが、こうした状況でも安心して走れる余裕があり、さらに日常領域であれば、運転に不慣れな人もより安心・安全・快適に運転出来るだろうと実感することができました。