スズキは、かつて「GSX-R/4」という魅力的なスポーツカーを開発していました。一体どのようなクルマだったのでしょうか。
■スズキが作った「隼」エンジン搭載スポーツカー!
スズキといえば、クルマのみならずバイクを製造していることも有名なメーカーで、とくにスポーツバイク「GSX-R」シリーズは、同社の伝統的モデルとして屈指の人気を誇ります。
そんなスズキが「2輪の“GSX-R”を4輪にしたらどんなクルマになるのか」というテーマのもと、個性的なコンセプトカーを開発したことがありました。
2001年に開催された「第35回 東京モーターショー」においてスズキは、後に市販化される「Lapin(ラパン)」や2シーター・スモールEVのコンセプトカー「Covie(コヴィー)」など、複数のモデルを出展。
その中でもひと際多くの注目を集めたのが、先述のテーマで作られた“4輪のGSX-R”こと、「GSX-R/4」でした。
同車のボディタイプは「オープン2シーター」ですが、極めて硬派な構造となっており、運転席は小さな風防(風よけ)があるのみ。
また、フロントとリアに採用されたプッシュロッド式ダブルウィッシュボーンサスペンションのコイルスプリングやダンパーは、ボディ上部から目視できる“むき出し”状態で設置されていました。
まさに「バイクをそのまま4輪にした」と言えるユニークなデザインは、世界のどのクルマにも似ておらず、会場で目撃したクルマ好きの心を強く掴んだのです。
そんなGSX-R/4のボディサイズは、全長3550mm×全幅1730mm×全高1000mm。
スポーツ性能を追求したコンパクトな車体は、専用開発の軽量高剛性アルミフレームに樹脂製のパネルを被せたもので、車両重量が645kgと非常に軽いのも特徴でした。
そしてこの軽量ボディに採用されたパワーユニットは、2001年当時、世界最速のバイクだった「隼」の1.3リッター直列4気筒エンジンで、ミッドシップレイアウトに搭載。
トランスミッションには6速MTを組み合わせて、最高出力175馬力・最大トルク14.1kgmを発揮し、さらにレッドゾーンは1万1000rpmと、超高回転を誇るユニットでした。
インテリアは、ナビゲーション機能を備えた大画面の液晶ディスプレイを運転席に装備。
このディスプレイは「サーキット攻略ナビ」という先進的な機能も有しており、エンジンのセッティング変更や走行データの確認を画面上で行えるほか、ライバルのクルマの情報を表示するなど、レースゲームのような楽しみ方も可能でした。
GSX-R/4は、外見は走りに特化したスパルタンな一台でしたが、当時の最新IT技術が用いられた、新感覚のスポーツモデルだったと言えるでしょう。
そんなGSX-R/4ですが、あくまでもコンセプトカーということで市販化されることはありませんでした。
しかし、スズキならではのユニークな発想と技術力を盛り込んだ個性的な1台として、今でもファンに語り継がれています。