かつてホンダが発表した、プレミアムセダンのコンセプトカー「KIWAMI」。その斬新なデザインや構造の優位性は、約20年という時を超えて証明されるのかもしれません。
■約20年前のコンセプトカーが、復活して「市販化」!?
2003年に開催された「第37回 東京モーターショー」でホンダは、「自由発想・自在技術」をテーマに掲げて、当時「次期NSX」と目されたスーパースポーツカー「HSC」をはじめとする5台のコンセプトモデルを出展。
その中でHSCと並んで話題となったのが、新次元のプレミアムセダンを目指した「KIWAMI(極み)」でした。
このKIWAMIについてホンダは、「先進の燃料電池技術と日本の美意識を融合させたプレミアムセダン」と紹介しており、その内容のとおり、ホンダが持つ最新の技術が用いられた1台です。
従来の燃料電池は、大きくて重かったため、デザインや性能にどうしても制約が生じるものでした。
しかしホンダは持ち前の技術によって、燃料電池システムを小型化。
さらに、ホンダならではの低床化技術を組み合わせて車内空間を広く取り、くわえて重心を下げることにも成功したため、運動性能の向上という相乗効果をもたらしました。
そしてボディサイズが全長4500mm×全幅1820mm×高さ1250mmと、まさに「ワイド&ロー」を絵に描いたようなスタイリングであることも、KIWAMIの特徴。
低い重心を実現しつつ、車内空間を拡大のためにルーフの面積を広げたことで、この独特のプロポーションになったのです。
当時、KIWAMIを見て「将来こんな斬新なプロポーションのクルマが市販化するのか?」と想像した人は多くいましたが、21年後の2024年、このKIWAMIによく似たデザインのコンセプトモデルが、再びホンダから発表されました。
それが2024年1月開催の「CES 2024」で初公開となった、ホンダの新たなグローバルEV「Honda 0シリーズ」のうちの1台である、「SALOON(サルーン)」です。
同車はエクステリアデザインやプロポーションのみならず、インテリアの構造までKIWAMIそっくりだったため、2003年の東京モーターショーを知る人からは「これってKIWAMIじゃないの?」という驚きの声が上がりました。
そして1年後の2025年1月8日、ついにSALOONの市販版のプロトタイプ(試作車)となるモデルが公開。
スタイリングの基本形状はコンセプト時のものを継承していますが、全面的なブラッシュアップが図られており、ボディがよりグラマラスになったほか、細部は市販車として現実味のあるものへと刷新されました。
しかし先述したKIWAMIを彷彿とさせるプロポーションはそのまま活かされており、大人4人が贅沢かつ快適に過ごせるスペースを確保したインテリアも引き継がれています。
このSALOONは、2026年にグローバル市場への投入開始が予定されており、ホンダの新たなEVシリーズにおけるフラッグシップモデルになると発表されています。
※ ※ ※
このように、SALOONの発表によって再び注目を集めることになったKIWAMI。
21年以上経過しても通用するほど、デザインレベルが高かったとも言える1台でした。
今後も、かつて注目を集めたコンセプトモデルのデザインを踏襲したクルマが、長い期間をあけて登場するかもしれません。