日本では「Vクラス」が唯一のミニバンラインナップとなっているメルセデス・ベンツですが、海外では、ちょうど扱いやすそうなサイズのモデルもラインナップされています。一体どのようなクルマなのでしょうか。
■「シンプルイズベスト」 サイズもちょうどいい
荷物が積めて大人数が移動できるミニバンは、国内で根強い人気を誇っており、新車販売台数ランキングのトップを占めています。
国産メーカーが台頭していますが、欧州メーカーでも注目すべきモデルがあります。それが、メルセデス・ベンツの「Tクラス」です。
Tクラスは2010年に発表されました。ルノーとの業務提携によって誕生したモデルで、乗用タイプのTクラスと、商用バンタイプの「シタン」が用意されています。
日本でも販売されているルノー「カングー」シリーズとは、コンポーネントを共通しており、実質的に兄弟車となります。
現行型は2代目で、2021年8月に登場。2023年5月にはEV(電気自動車)仕様の「EQT」が発表されており、多彩なバリエーションを持っています。
日本でメルセデス・ベンツのミニバンといえば、国内では非常に豪華な内外装を持つ高級ミニバン「Vクラス」がありますが、Tクラスはこれとは正反対の実用重視モデル。
内外装は、乗用・商用を兼ねることから非常にシンプルな仕立てで、Vクラスのようなウッドや本革、メッキ素材をもたず、エクステリアも押し出しの強いマスクなどがなく、プレーンな雰囲気です。
ボディサイズは全長4498mm×全幅1811mm×全高1859mm、ホイールベース2716mmと、都市部でも取り回しのしやすいサイズを実現。
また、ラインナップにはロング仕様も設定されており、全長は4922mm・ホイールベース3100mmと、標準仕様より全長は424mm、ホイールベースは380mmそれぞれ延長され、車内空間が広くなっています。
これはトヨタの高級ミニバン「アルファード」ほどのサイズ感で、荷室容量(5名乗車時)は標準仕様が551リッター、ロングホイールベース仕様が828リッターと大容量化を実現。オプションで2名分のサードシートが設定され、7人乗りも選択できます。
シートアレンジは多彩で、セカンドシートとサードシートはすべて個別にスライド・格納・脱着が可能。セカンドシート、サードシートをすべて外した際の荷室容量は最大3600リッターを確保できます。
パワートレインは1.3リッターガソリンエンジンもしくは1.4リッターディーゼルエンジンで、6速MTもしくは7速DCTを組み合わせ、前輪駆動です。先述のEQTも前輪のみにモーターを搭載しています。
2024年6月にはEQTにもロングホイールベース仕様を追加設定され、さらにラインナップの拡大を図っています。
先進機能では、直感的操作を可能にした最新のマルチメディアシステム「MBUX」を採用したほか、レーンキープアシストや交通標識認識、アクティブブレーキアシストなど、メルセデス・ベンツの最新機能が標準となっています。
Tクラスの価格(現地VAT込み)は、2万6200ユーロ(約421万円)から、7人乗りのロングボディ仕様は2万9087ユーロ(467万円)からです。
ベーシックなガソリンから、パワフルで経済的なディーゼルエンジン、さらにはEV仕様と、多岐にわたる選択肢を持っているTクラスは、ちょうど良いボディサイズから日本国内でも扱いやすそうなモデルです。
高級ミニバンが多いなか、親しみやすいシンプルなデザインの大型モデルは少なく、特にロングボディ仕様については日本への投入も十分期待したいところです。