トヨタのインド法人は、2025年1月にインドで開催された「第2回 Bharat Mobility Global Expo 2025」で、かつて日本で披露されたコンセプトカーの「クロスバンギア」が出展されました。どのようなクルマだったのでしょうか。
■超画期的!観音開きのスライドドアを持つ「SUVミニバン」
トヨタのインド法人は、2025年1月18日から21日にかけてインド・デリーのドワールカで開催されたモーターショー「第2回 Bharat Mobility Global Expo 2025(バーラト モビリティ グローバル エキスポ)」に出展し、多数の市販車やコンセプトカーを披露しました。
その中の1台に、「X-VAN GEAR CONCEPT(クロスバン ギア コンセプト、以下クロスバンギア)」が登場しました。
このモーターショーは「第17回インドオートエキスポ2025」という別名もあります。2025年の開催からは、インド政府(経済産業省)主導の展示会として位置付けられ、インドの自動車関連団体と政府が協力して開催するモーターショーとなりました。
また、イベント名は「新インドオートエキスポ2025 in Bharat Mobility」となり(Bharatはヒンディー語で「インド」を意味する)、今後毎年開催されることが発表されています。
クロスバンギアは、2023年10月に開催された「第1回ジャパンモビリティショー」で初披露されたコンセプトカーです。トヨタグループの主要ボディメーカーである「トヨタ車体」が発表した次世代の「SUVミニバン」として、大きな注目を集めました。
このモデルの外観は、直線基調のタフなデザインと、マットなライトブルーメタリックとダークグレーの樹脂によるツートーンカラーが特徴的です。さらに、大径タイヤと高めの地上高が相まって、ミニバンでありながらSUVらしい力強さを演出しています。
トヨタ車体は「乗用ミニバンの広々とした空間とSUVのアクティブなスタイルを融合させた、新しいカテゴリーのクルマ」と説明しており、まさに「SUVミニバン」という三菱「デリカD:5」に近いクロスオーバーモデルとなっています。
フロントデザインは、大型のダークグレー樹脂製グリルとバンパーが印象的で、ホイールアーチにはSUVらしい樹脂製クラッディングが施されています。これにより、ミニバンの実用性とSUVの力強いデザインが見事に融合しています。
ボディサイズは、全長4695mm×全幅1820mm×全高1855mmと、トヨタ「ノア」と同等の大きさです(ノアは全長4695mm×全幅1730mm×全高1895mm-1925mm)。
インテリアは、シンプルな運転席まわりに加え、ホワイト系を基調とした明るいデザインのシートが特徴的。さらに、ライトブルーのアクセントが加えられ、リビングのような開放感のある空間が演出されています。
また、3列シートは6パターンのアレンジが可能で、助手席の回転や2列目シートのテーブル化など、多様な使い方に対応。室内寸法は、室内長2965mm×室内幅1550mm×室内高1340mmとなっており、ノア(室内長2805mm×室内幅1470mm×室内高1405mm)と比較すると、若干広い設計になっています。
ただし、コンセプトカーのため、実際の量産モデルが登場したとして、同じ居住性が確保されるかは未知数です。しかし、次世代SUVミニバンとして、ミドルクラス以上のゆとりある空間を意識して設計されたことがうかがえます。
特に注目を集めたのは、Bピラーを廃止し、前後席ともにスライドドアを採用した点です。センターピラーを中心に前後方向へ開く観音開き式のスライドドアにより、従来のミニバンにはない大開口を実現。乗降のしやすさや荷物の積み下ろしの利便性が大幅に向上しています。
この設計により、自転車や釣り竿といった長尺物の収納が容易になるほか、アウトドアシーンでドアを開けたまま室内でくつろぐといった新たな使い方も想定できます。
パワートレインやプラットフォームについては、コンセプトカーとしての方向性を示すモデルであるため、具体的な仕様は定められていないとのことでした。
2023年4月には、インドの人口が中国を超えて世界最多となり、経済成長も著しいものとなっています。自動車市場も拡大を続けており、インドはグローバル市場において重要な存在となりつつあります。こうした状況の中、新インドオートエキスポは今後、世界的に注目されるモーターショーのひとつとなるでしょう。
そんなモーターショーに、クロスバンギアを披露したということは、グローバルモデルとしての「新型SUVミニバン」の開発をしているのではないかと期待が持てます。