交通違反をした際に「警察を振り切って逃げ切れるのでは?」という妄想をする人もいるかもしれません。もちろん違反行為をしてしまったら素直に取り締まりを受けることが望ましいですが、現実的解釈を元警察官が解説します。
■パトカー、白バイ、オービス…速度違反の取り締まり方法はさまざま!
道路上においてはときどき、スピード違反の取り締まりがおこなわれています。
ドライバーの中には「追跡を振り切ることは可能」と考える人もいるようですが、もちろん違反行為をしてしまったら素直に取り締まりを受けることが望ましいです。
ここでは、あくまでも仮定として「警察から逃げ切ることは可能なのか」を元警察官が解説していきます。
日々、全国各地で交通違反の取り締まりがおこなわれています。
警察庁の統計によると、2023年中の交通違反の検挙件数は547万6654件であり、1日当たり約1万5000件もの違反が検挙されている計算です。
その中でも最高速度違反(スピード違反)は88万8500件と、一時不停止違反の126万7094件に次いで2番目に検挙件数が多く、また他の違反と比べて取り締まり方法が複数あります。
たとえば警察官が道路脇に速度計測器を設置し、その先で速度違反の車両を停止させる定置式取り締まりと呼ばれる方法や、覆面パトカー・白バイが速度の速い車両の後ろを一定の間隔を空けて追尾し、速度を計測する方法などがあります。
さらに警察官だけでなく、速度違反自動取締装置(通称:オービス)という機械を使用した取り締まりもおこなわれています。
オービスは走行する車両の速度を測定し、一定の速度以上で走る車両を速度違反車両として自動で写真撮影・記録化する装置であり、写真撮影の際に明るく発光するのが特徴です。
オービスは主に「固定式」と「可搬式」の2種類に分けられ、固定式オービスは交通事故の多発する高速道路や国道などの上部に設置されています。
一方、可搬式オービスは三脚の上にカメラやストロボの付いた箱が乗ったような装置であり、その名称のとおり自由に持ち運ぶことができます。
そのため、主要な道路に限らず通学路や狭い生活道路などでの速度違反取り締まりにも活用されており、神出鬼没と言われています。
このように、あらゆる方法で速度違反の取り締まりが実施されていますが、ドライバーからは「パトカーによる追尾ならワンチャン逃げ切れる」、「県外でオービスを光らせても検挙されない」といった意見も聞かれます。
では速度違反の取り締まりを受けた際に、警察から逃げ切ることはできるのでしょうか。
結論から言うと、その場でパトカーや白バイからの追跡を振り切ったとしても、事後の捜査によって検挙される可能性が高く、逃げ切ることは難しいといえます。
警察では車両のナンバーから所有者を特定できるほか、最近では防犯カメラ、ドライブレコーダーの普及により逃走方向や車両の特徴などを捜査することが可能です。
またオービスによる取り締まりの場合、写真には車両のナンバーや車種、ドライバーの顔などがハッキリ写ることから、基本的に「ドライバーは自分ではない」との言い逃れができません。
オービスによる取り締まり後は、警察から違反者(車両所有者の住所)に対して速度違反の通知書が郵送され、警察への出頭を求められます。
その際、警察からの再三の呼び出しに応じなかったり、故意に出頭しなかったりした場合は逮捕されるケースもあります。
実際のところ、2024年11月に北海道恵庭市の国道において法定速度を54キロオーバーで走行した岐阜県在住の男が警察の再三にわたる出頭要請をすべて無視した結果、2025年1月に道路交通法違反(速度超過)の疑いで逮捕されています。
この事例では北海道警の警察官が男の住む岐阜県まで出向いて逮捕しており、たとえ取り締まりを受けた地域以外に居住していたとしても、検挙されない保証はないといえるでしょう。
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固定式オービスの設置場所の手前には「スピード注意 自動速度取締機設置区間」などと書かれた注意喚起の看板があります。
また各都道府県警察が可搬式オービスによる取り締まり地域をウェブサイトやSNSで公開している場合もあるため、それらの情報を参考に運転すると良いかもしれません。