トヨタのインド法人は、2025年1月18〜21日にインド・デリーで開催された「新インドオートエキスポ」で、1台のコンパクトカーを出展しました。どのようなクルマなのでしょうか。
■トヨタとスズキの業務提携で誕生したスターレット
トヨタのインド法人は、2025年1月18〜21日、インド・デリーのドワールカで開催されたモーターショー「第2回 Bharat Mobility Global Expo 2025(バーラト モビリティ グローバル エキスポ)」で、多数の市販車やコンセプトカーを出展、その中の1台に「グランツァ」がありました。
今回行われたモーターショーは「第17回インドオートエキスポ2025」という別名もあります。
2025年開催からは、インド政府主導型(インド経産省)の展示会とし、インドの自動車工業関連各組織と政府が協力して開催されるモーターショーとなり、イベント名「新インドオートエキスポ2025 in Bharat Mobility(Bharatとは、ヒンディー語でインドのこと)」として毎年開催となることが発表されています。
2023年4月に、インドの人口は中国を抜いて世界第1位となり、経済面も大きく成長しています。また、自動車マーケットも拡大しており、グローバルでも重要な市場の1つへと成長。新インドオートエキスポは、今後重要なモーターショーの1つとなるでしょう。
なお、インド向けにグランツァとして展開されていますが、アフリカには「スターレット」として展開されています。
スターレットといえば、3ドアまたは5ドアのハッチバック型コンパクトカーで、1978年に初代モデルがデビュー。日本市場では5代目まで販売され、1999年に生産を終了。その後、後継車として「ヴィッツ」にバトンが渡されました。
一方、海外市場では6代目へとフルモデルチェンジされ、現在も販売が続いています。
初代から5代目まではトヨタが開発・製造・販売を手がけていましたが、6代目はスズキの「バレーノ」のOEM(他社製品を自社ブランドで販売すること)供給を受けて販売されています。
このOEM供給は、2016年に故・鈴木修元スズキ会長と豊田章男トヨタ会長が業務提携の検討を開始して以来、両社の協業が進められてきた流れの一環です。
6代目は、2019年1月にトヨタからアフリカでの営業業務を全面移管された豊田通商株式会社が、2020年9月より南アフリカを皮切りに順次アフリカ市場で販売を開始しました。
バレーノの製造はインドのマルチ・スズキが担当し、スターレットはインドからアフリカへ輸出されています。また、トヨタのインド法人へOEM供給されるモデルは前述のグランツァとして展開されています。
ちなみに、グランツァという名称は、5代目スターレット(1996〜1999年)に設定されていたターボ車のスポーツモデル(自然吸気モデルもあり)にも使用されていました。
今回出展されていたグランツァは、2024年10月に現地で発表された純正アクセサリーを装着した「フェスティバル限定」モデルです。
ボディサイズは、全長3990mm×全幅1745mm×全高1500mmの5ドアハッチバックで、乗車定員は5名です。
パワートレインは、最高出力90PS・最大トルク113N・mを発生する直列4気筒1.2リッターガソリンエンジンに、5速ATまたは5速セミATを組み合わせたガソリンモデルと、天然ガスを燃料とする「E-CNG」(最高出力89PS・最大トルク98.5N・m、5速MTのみ)の2種類が設定されています。
車両価格は68万6,000インド・ルピー(1インド・ルピー=1.8円換算で約123万円)からと、比較的手頃な価格設定となっています。
グランツァはエントリーモデルに位置づけられており、エアバッグやABSなどの基本的な安全機能を備える一方で、先進予防安全技術や運転支援機能は搭載されていません。
「スターレット」という車名を聞くと、かつての初心者向けモデルや日常の足として親しまれたクルマを思い出し、エモーショナルな気持ちになる方も多いでしょう。
日本市場でバレーノのOEMモデルが「スターレット」として販売される可能性は低いと考えられます。
しかし、一時期スポーツモデルが「スターレット」の名でGRブランドから登場するのではないか、という噂もありました。今後の展開に、淡い期待を寄せてもよいのではないでしょうか。