「停止線で止まると左右が見えない」という理由により、一時停止できちんと止まらなかったり、停止線で止まっているつもりというドライバーが存在します。停止線を越えるのは交通違反にならないのでしょうか。
■「停止線」でピタっと止まらないドライバー多くない?
クルマを運転していると、塀や民家、道路の形状などさまざまな事情により、左右の見通しがきかない十字路・や丁字路交差点に出くわすことがあります。
このような見通しの悪い道路では、車両同士や車両と歩行者との「出会い頭事故」を防ぐため、多くの場合、優先道路ではない方の道路に「一時停止」の道路標識とともに「停止線」が設置されています。
その一方で、「停止線で止まると左右が見えない」という理由で一時停止をしなかったり、停止線で“止まっているつもり”で実際には止まっていないドライバーも存在します。
左右の見通しが悪いからといって、停止線を越えた場所で止まる行為は「一時不停止」の交通違反にならないのでしょうか。
SNS上でも停止線で止まらないクルマに関しての書き込みが寄せられており、「一時停止無視のクルマに引かれかけた。運転手が怒鳴ってきたけど、そちらが一時停止なんだが?」といった怒りの声のほか、「クルマの側面にぶつけられた」など交通事故に遭ったというものも見受けられます。
一時停止については道路交通法第43条で次のように規定されています。
「車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前で一時停止しなければならない。」(条文を一部抜粋)
この条文でいう一時停止とは、クルマのタイヤが完全に停止することを意味しており、つまり停止線の手前で確実に止まる必要があるということ。
一切スピードを落とさず停止線を通過した場合はもちろんのこと、スピードを落として少しずつ停止線上を進行した場合も、厳密には一時不停止の違反に当たるといえるでしょう。
なお、警察庁の統計によると、2023年に一時不停止違反の検挙件数は126万7094件と全体の約23.1%を占めたといい、交通違反のなかで最も多いものでした。
ドライバーは停止しているつもりかもしれませんが、ほかの人から見ると、きちんと停止していないシーンは少なくありません。そのため、自分が思っている以上に停止線でしっかり止まる意識を持つことが重要です。
左右の見通しが悪い交差点においては、その先の道路を通行する車両や歩行者と接触しないよう、警察は「多段階停止」を推奨しています。
行程が3つあるため「3段階停止」と呼ばれることもあるのですが、1つ目は「停止線で停止」、2つ目は「見せる停止」、3つ目は「確認の停止」と3回の停止が必要です。
具体的には、「停止線で停止」は交通ルールに則って、停止線の直前で止まることです。
「見せる停止」は、優先道路を通行している車両や歩行者に自車の存在を認知してもらう、交差点の角にクルマのバンパーを揃えるように停止するもの。「見せる停止」することで、優先道路の車両から見えやすくなるほか、歩行者からもクルマの先端が見えるようになるでしょう。
そして、「確認の停止」は、停止位置から左右の安全が確認できる位置までゆっくりと前進し、停止することです。その際に運転席から前へ身を乗り出すようにして左右の安全確認をすれば、事故のリスクはかなり減らせると言えます。
なお、「見せる停止」と「確認の停止」の行程をひとまとめにして「2段階停止」と呼ぶこともあります。
また、SNSでは複数回にわたって停止する方法について、「自動車学校で教えられた記憶があるんだけど、みんな忘れちゃうのかな」「当たり前のことだけどやっていないクルマが多い」といった意見が聞かれます。
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見通しの悪い交差点もそうですが、一時停止の標識や停止線でしっかり止まらないクルマを見かけることが多い状況です。
一時停止の標識があるところでは必ず止まり、左右の見通しが悪い交差点では停止線で止まった後に、「見せる停止」「確認の停止」を行い、左右の安全を自分の目で確認するようにしましょう。