今後、運転免許を取得する際は「AT限定免許」が基本になり、MT教習はオプション扱いになるようです。一体どういうことなのでしょうか。
■「MT車」はオプション? 法改正で教習が変更に
2025年4月から、教習所のカリキュラムが変更になります。
AT(オートマチックトランスミッション)車が基本となり、MT(マニュアルトランスミッション)免許を希望する場合は、さらに追加で講習を受ける流れに変わるようです。一体どういうことなのでしょうか。
内閣府が発表した統計によると、2023年末時点での運転免許保有者数は、全国で前年と比べて約2万人増加して約8186万人。
その内訳は男性が約9万人減少して約4424万人、女性は約11万人増加して約3762万人となり、その構成率は男性54.0%、女性46.0%となっています。
2023年10月1日時点での日本の人口は1億2435万2000人と発表されているので、運転免許を保有していない子どもや高齢者の人数を差し引いたとしても、単純計算で7割近い人が保有していることが分かります。
また、警察庁交通局運転免許課が発表している直近のデータによると、2023年における普通免許の受験者数は158万2228人、それに対しての合格者は116万4801人でした。
そのなかで、AT限定免許の受験者数は108万7795人、合格者は78万9713人でした。つまり、7割近い人がAT限定免許を選んでいることが分かります。
実際、現在新車で販売されるクルマの98%以上がAT車であり、あえてMT車を選んで乗るという人はごく少数ともいえます。
そんななか、2024年6月26日、2025年4月より施行される「道路交通法施行規則の一部を改正する」内容をまとめた内閣府令が公布されました。
その内容の一部を抜粋・要約すると、「2025年4月以降は、教習所での講習方法はAT免許が基本となり、MT免許を希望する場合は追加のプログラムを受ける必要があること」というものが盛り込まれています。
もともとAT免許を希望していた人にとって気にする必要はありませんが、MT免許を検討していた人にとっては新たな出費や手間が増える可能性があるのです。
教習所側の動きはどうなのでしょうか。首都圏にあるA教習所に実際に聞いてみました。
「4月以降、新法(道路交通法施行規則の一部を改正)が適用されることは確かです。しかし、旧法(従来の教習所でのカリキュラム)がまったく使えなくなるわけではなく、移行期間の関係もあって、どちらを適用するかは個々の教習所の判断に委ねられています。
私が知る限り、当県では新法を導入する教習所はほぼないと聞いていますが、ここも地域差があると思うので確認してみてください。
仕事でMT車に乗る必要がある、あるいはクルマが好きでMT車に乗りたいというのであれば、旧法のMT車用のカリキュラムを運用している教習所を選んで受講された方がいいかもしれません」
また、関西方面のB教習所のスタッフの方にも聞いてみました。
「2025年4月以降にご入所で、MT免許をご希望の方は新たなカリキュラムに沿って受講していただく形になります。まずはAT車で講習を受けていただき、卒業検定まで進みます。
合格後、最短で4時間、MT車で講習を受けて審査に合格した後、ATおよびMT、2通の証明書を提出したうえで学科試験を受けることができます。
カリキュラムの変更に伴って料金も改定(値上げ)となってしまいますので、受講を考えている方は(空き状況などを含めて)1度確認された方がいいかもしれません」
教習所や地域によって異なるケースはあるようですが、やはりMT車教習は「オプション」といったかたちで、まずはAT免許を取得できる状態までたどりついたあと、MTの教習をスタートするという動きになっていくようです。
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MT免許が必要になるケースといえば、自動車関連業に務めるか、自宅にあるクルマはMTしかないとか、愛車にMT車を選ぶかなど、レアケースであることも事実です。
かつては「男がAT免許なんて恥ずかしい」なんて時代もありましたが、現在は一部のクルママニアを除けば特に負い目に感じることもありません。
MT免許を希望する場合、これまでより教習所での費用が一律に高くなるというわけではなさそうですが、地域や教習所によって明確に違いが出ることは確かです。
とはいえ、コツをつかむことに苦労するMT車で最初から教習を受けるよりも、まずはAT車で正しい運転技能や交通ルールを学んでから、MT車をスタートすることで落ち着いて運転を学べるという捉え方もできます。
たまたま「新法(道路交通法施行規則の一部を改正)」のタイミングに当たってしまった人は、自身が申し込もうと思っている教習所が新法および旧法、どちらを選択しているかを確認したほうがよいでしょう。