高知市の東隣にある「南国市」の読み方は、「なんごくし」ではありません。なぜ変わった読み方になったのでしょうか。
■意外な読み方 その経緯は
高知市の東隣にあるのが「南国市」です。
高知のベッドタウンでもあり、鉄道の結節点でもある南国市ですが、読み方は一筋縄ではいきません。
多くの人は、南国市のことを「なんごくし」と読むかもしれませんが、実は違います。
正しい読み方は「なんこくし」で、濁らない特殊な読み方です。
なかなか正しく読めないのか、2015年に一部開通した高知東部道のIC名称は「なんこく南IC」と、ひらがな表記が採用されています。
ちなみに、古くからある高知道では「南国IC」「南国SA」と漢字表記ですが、南国SAだけ「なんごく」と濁るのでややこしくなっています。
市名自体がざっくりとした概念的単語なので、平成の大合併で生まれたというイメージが先行しますが、実は歴史が古く、誕生は「1959年」なのです。
昭和の大合併で、後免町ほか4村が合わさって生まれました。「後免」という地名はJR土讃線の主要駅のひとつであり、高知市内からやってきた路面電車の終点でもあり、土佐くろしお鉄道「ごめん・なはり線」の起点でもあります。『アンパンマン』の作者、やなせたかしさんの出身地であり、JR後免駅には「ごめんごめんごめん」といったフレーズが書かれたモニュメントがあるなど、全国的な知名度があります。
そんななか、合併にあたっては、新市名として城東市、嶺南市、後免市、香長市、南国市、南海市、黒潮市、長陵市、東高知市、ニューコウチ市…と挙がったなかで、その気候や住民気風、「呼びやすく、書きやすい」などの理由で、南国市に決定したといいます。ペギー葉山さんの歌う『南国土佐を後にして』のヒットも後押しになった形です。
では、なぜ「なんこく」と、わざわざ濁らない読み方にしているのでしょうか。南国市のウェブサイトには以下のような説明が書かれています。
「『みなみのくに』という意味と、『くに』は濁点がないことから、『国』を『ごく』とは呼ばず、『こく』と呼ぶことの見解で一致」(参照元:1998年の職員広報)
もちろんこれは「見解」として公式化したもので、文献によっては「ごく」は「獄」につながるので避けた、という説も提唱されています。
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早くから市制施行して発展著しかった南国市。高知市とをつなぐ国道55号は1989年には全線4車線化完成しています。
それでも渋滞緩和や高知空港の高知道直結、高知県東部エリアのアクセス向上などを図るため、「高知東部自動車道」が計画され、少しずつ事業化、開通を迎えています。
すでに高知道~高知空港は開通済みですが、2025年3月15日には、ブツ切れになっていた高知龍馬空港IC~香南のいちICが開通。南国市内区間はいよいよ全線完成となります。