クルマの屋根にある「謎の角」は一見装飾のようにも見えますが、果たしてどのような役割を持つのでしょうか。
■屋根に備わった角の意外な正体と役割とは?
クルマの屋根には角、あるいはサメのヒレのような形状をした部品が備わっています。
形状の通り、一般的には「シャークフィンアンテナ」と呼ばれますが、どのような部品なのでしょうか。
デザイン的な特徴も兼ね備えていますが、実はこのアンテナは、主に車両の通信機能を支える役割を果たしているのです。
現代の自動車は単なる移動手段ではなく、高度な通信機能を備えた「モバイルデバイス」としての側面を持つようになっております。
そのため、車両と外部とのデータ通信が欠かせません。
シャークフィンアンテナは、FMラジオやAMラジオ、GPS(全地球測位システム)、衛星ラジオ、さらには車内インターネット接続を提供するLTE通信など、さまざまな電波を受信するために使用されます。
また、近年ではADAS(先進運転支援システム)や自動運転技術が進化しており、車両同士やインフラとの通信が重要性を増しています。
シャークフィンアンテナは、これらの先進技術のための通信基盤としても欠かせない存在です。
たとえば、リアルタイムの交通情報を受信したり、緊急時の通報システム(eCall)にも利用されます。
ちなみに、従来のアンテナは棒状の形状をしており、車体の外側に突き出して設置されることが一般的でした。
棒状アンテナは、電波の受信感度が高いという利点があります。
一方で、破損や盗難など外部からの物理的な影響を受けやすいものでした。
対して、シャークフィンアンテナはコンパクトにまとめられた設計であり、複数の通信機能を集約できる点が特徴的です。
さらに、車体の外観を洗練させるとともに、空気抵抗を軽減して燃費向上に寄与するというメリットもあります。
一方、最新の通信機能が搭載されていない車両であれば、シャークフィンアンテナは必ずしも必要ではありません。
たとえば、単純なラジオ受信機能のみを備えた車両では、従来の棒状アンテナ形状でも十分対応できると言えるでしょう。
また、クラシックカーなどのように、そもそも通信機能が備わっていないようなクルマはアンテナ自体が存在していないケースもあります。
一方、アンテナがないように見える車両でも、実際にはアンテナが内蔵されているものもあります。
ただ、こうしたアンテナレスのデザインは、外観を損なわないという利点を持っているものの、そのような車両では電波受信能力に制約が生じる可能性もあるため、ほかの補完技術を併用することで通信機能を維持する設計が求められる場合があります。
そうした事情もあり、アンテナレスのデザインが採用されるのは高級スポーツカーなどが多いようです。
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クルマの屋根にある「謎の角」の正体は、シャークフィンアンテナと呼ばれる通信装置であり、現代の車両に欠かせない役割を果たしています。
通信機能の多様化に伴い、この部品は車両のデザインや機能性に影響を与える重要な要素と言えます。
一方で、車両の用途や通信機能の進化に応じて、さまざまなアンテナ形状が選択可能です。
それぞれの特徴を理解し、自分のニーズに合った選択をすることが、快適で効率的なカーライフにつながるのではないでしょうか。