渋谷の国道246号や環七通りなどを走っていると、案内看板で「瀬田」という地名を目にすることがあります。一体どんな場所なのでしょうか。
■謎の地名「瀬田」とは
渋谷の国道246号や環七通りなどを走っていると、案内看板で「瀬田」という地名を目にすることがあります。
駅名として知名度があるわけでもなく、一体どこを指しているのか、あまり知られていません。
東京圏における「瀬田」という地名は、国道246号を二子玉川方面へ下った途中にある、世田谷区内にあります。
国道246号と環八通りが交差するのが「瀬田交差点」で、4車線と6車線がクロスしているだけでなく、さらに用賀駅から下りてきた路地も接続して「五差路」になっているため、かなりカオスです。なお国道246号はアンダーパスがあるので、信号待ちを気にせずに通過できます。
その重要性から、国が「案内標識に用いる地名」リストにも含まれているほどで、東京23区の「主要地」扱いされています。標識に瀬田が頻繁に現れるのはこれが理由で、慣れたドライバーは「瀬田へ行けば国道246号~環八の乗り換えができる」と認識します。横浜・川崎方面から多摩川を超えて上ってくると、杉並区や大田区、羽田空港方面への重要な分かれ道となります。
この瀬田交差点はさらに珍しい構造になっていて、川崎側のアンダーパス出口に「側道と合流する地点の信号機」があるのが特徴です。アンダーパスをくぐり抜けて、その先に赤信号が待っていて、交差点からやってきた側道交通が通過するのを真横に見るという風景は、慣れないと少し不思議な感覚になります。さらに側道は、その合流信号の手前にも、もうひとつ歩行者用の信号があります。
ちなみに、かつてはこの地に鉄道駅がありました。
東急田園都市線の渋谷~二子玉川はかつて、世田谷線と同じ路面電車規格の「東急玉川線」として、田園都市線とは独立して地上をのんびり走っていました。用賀と二子玉川園の中間にあったのが「玉電瀬田」電停です。
玉電瀬田は、瀬田交差点をすぎて枝路地が真南へ向かうあたりにありました(瀬田交番付近)。ここから武蔵野台地の段丘を一気に駆け下りた先が終点の二子玉川園で、電車線(大井町線と一体化していた田園都市線)に乗り換えができました。
周囲には玉川観音や瀬田玉川神社をはじめ寺社が点在し、かつては台地の崖上に「瀬田温泉」が営業していて、露天風呂からは富士山を眺めることができたといいます。
そもそも「瀬田」という地名の由来は、区の説明によると「瀬戸」であるといいます。「せ」は「狭い」に通じ、狭い谷筋などを意味します。
ただ、どのあたりの地形を指して「狭い谷筋」と呼んでいたのかは、判然としていません。区は「多摩川沿岸から台地中の谷の多い相当広い区域」を何となくセトと呼んでいたようだと結論付けていますが、その解釈であれば、岡本と深沢の丘陵に挟まれた上野毛~上用賀あたりの谷沢川流域の谷筋の可能性があります。
谷沢川は最下流部で、散策スポットとして人気の高い「等々力渓谷」となっています。都内でありながら自然に囲まれた深い谷の風景を楽しむことができ、鬱蒼としつつ小川のせせらぎが、慌ただしい東京の街に束の間の癒しを与えてくれます。