トヨタのアメリカ法人は2023年、コンセプトモデル「サイオンX86Dコンセプト」(2012年製作)の写真を公開しました。当時若者向けブランドであったサイオンの5ドアボディの86とは、どのようなクルマだったのでしょうか。
■幻のスポーツワゴン「X86D」
トヨタのアメリカ法人は2023年、カリフォルニア州に設立したデザイン拠点「キャルティデザインリサーチ」の設立50周年を記念して、過去の秘蔵モデルの写真を公開しました。
これまで2代目「セリカ」や初代「プリウス」など、数々の名車を生み出してきた同スタジオの記念企画の中で、特に注目を集めたのが2012年に製作された「サイオンX86Dコンセプト」です。
サイオンとは、トヨタが若年層向けの新しい商品やビジネスを試行するために、2003年に設立されたブランドです。
2016年8月にトヨタブランドへ統合されましたが、サイオンブランドでは100万台以上を販売し、そのうち70%がトヨタの新規顧客となっています。
そんなサイオンで当時販売されていた小型スポーツカー「FR-S」(日本市場のトヨタ「(初代)86」)を起点とし、誕生したのがサイオンX86Dコンセプトです。
なおFR-Sは現在「GR86」として進化を遂げ、FRスポーツカーの定番モデルとして愛されています。
GR86は全長4265mm×全幅1775mm×全高1310mmという比較的コンパクトなボディサイズに、2575mmのホイールベース。
内装は、ブラックを基調にしたシンプルな配色のコクピットを採用しています。
7インチのカラーメーターには、スポーツ走行に必要な情報を集約し、視認性と瞬読性を高めました。
先進安全装備としてはアイサイトを搭載し、衝突回避サポートや全車速追従機能付クルーズコントロール(AT車)などを備えています。
パワートレインには最高出力235ps・最大トルク250Nmを発生する2.4リッター水平対向4気筒エンジン(FA24型)を搭載。
トランスミッションは6速MTまたは6速ATが選択可能です。
グレードは「RZ」「SZ」「RC」「RZ Ridge Green Limited」の4つ展開されており、価格(消費税込)は293万6000円から399万5000円となっています。
サイオンX86Dコンセプトの外観は、こうしたGR86にも通ずる低いボンネットラインを採用しながら、抑揚のきいたグラマラスなラインを採用。
また、クーペボディではなくワゴンスタイルを採用し、5ドア仕様になっているのも特徴的です。
蝶ネクタイ状の黒いグラフィックをあしらったフロント及びリアデザインは、インパクトの強い造形ながら、コンセプトカーならではの強い個性を表現しています。
このように、サイオンX86Dコンセプトは、トヨタがアメリカ市場で若者向けに展開したサイオンブランドの挑戦的な姿勢を象徴する、興味深いモデルとして歴史に刻まれることになったのです。