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伊勢志摩~渥美半島の「わずか20km」海峡部つなぐ「伊勢湾アクアライン」計画どこまで進んだ? 夢の構想路線「伊勢湾口道路」のスゴさとは

くるまのニュース 2025年2月7日 7時30分

愛知県と三重県の海峡をつなぐ「伊勢湾アクアライン」とも言うべき構想が進められています。一体どのような道路で、実現に向けてどこまで進んでいるのでしょうか。

■伊勢湾の「最狭部」に道路をつなぐ!

 愛知県と三重県の海峡をつなぐ「伊勢湾アクアライン」とも言うべき構想が進められています。
 
 一体どのような道路で、実現に向けてどこまで進んでいるのでしょうか。

 東海地方は、伊勢湾が北へ食い込んでいるのが特徴です。そのため、浜松から名古屋方面へ、道路は急に北へ大きく迂回していくこととなります。関西方面へ行きたい場合、なんとなく「北へ迂回している」感じがします。

 いっぽう、愛知県豊橋市から、西へ大きく「渥美半島」が突き出しています。

 渥美半島先端「伊良湖岬」の先にはすぐ三重県鳥羽市の対岸があり、伊勢湾で最も狭い部分「伊良湖水道」を形成しています。

 ここに橋かトンネルを作れば、東海地方~近畿地方の最短ルートになるのでは? と考えてしまいますが、実はすでに国の構想にあるのです。

 それが「三遠伊勢連絡道路」という構想路線で、2021年に国が策定した「新広域道路交通計画」にもリストアップされています。もしくは「伊勢湾口道路」とも呼ばれています。

 伊良湖水道は海しかないわけではなく、途中に「神島」「答志島」といった有人島や、その間にもいくつかの無人島を抱えています。

 もし橋を架ける場合、1本の長い橋ではなく、島を介して数本の橋でつなげることも考えられるというわけです。このような例は、瀬戸内海で本州~四国をむすぶ「瀬戸大橋」「しまなみ海道」などもあります。

 伊良湖岬~鳥羽市の直線距離は約20km。しかし神島までは約5km、神島~答志島は約7km、答志島から陸地までは2kmもありません。ちなみにアクアラインの海底部は約9km、明石海峡大橋は約4kmです。

 あわせて伊良湖岬から国道23号の三河港までを高規格化する「渥美半島道路」も構想路線。そこからさらに東名へつなぐ「浜松湖西豊橋道路」は、2023年に概略ルートが決定し、都市計画決定と環境アセスメントが進められているところです。

 関西側では、まず鳥羽から伊勢自動車道が開通済みですが、多気からまっすぐ西進して宇陀市、橿原市へ直結する「東海南海連絡道」が構想中です。

 これらをつなげれば、豊橋~大阪を約180kmでつなぐ短絡ルートが誕生します。新名神経由と比べても20km近い距離短縮が可能で、通行止めなどの際には代替ルートとしての役割を発揮します。

■どこまで話は進んでいるの?

 さて、気になる進捗ですが、事業化への第一歩となる「計画段階評価」を始めていこうという機運は、まだ高まっていません。中部地方整備局の2024年度の調査計画を見ても、「伊勢湾周辺の道路ネットワークについて調査します」といったざっくりとした記述すらありません。まだまだ優先順位は低そうです。

中部圏による要望が続けられている(画像:愛知県)

 しかし、国はやる気を失っているわけではありません。2023年7月に「国土形成計画(全国計画)」が策定され、「2050年、さらに先の長期を見据えつつ、今後おおむね10年間(略)総合的かつ長期的な国土づくりの方向性を定めることとする」としています。

 そんな総合計画のなかで、国は以下のとおり、はっきりと宣言しています。

「湾口部、海峡部等を連絡するプロジェクトについては、地域活力の創出、リダンダンシーの確保等の観点も含め、国土全体にわたる連結強化の重要性も踏まえつつ、民間活力の活用も視野に、長期的視点から取り組む」

 これはすなわち、今後10年間に、伊勢湾口道路のプロジェクトも何らかの前進を見せる(つまり予算を付けていく)可能性もあると言っていいでしょう。

 沿線自治体の熱意は高く、2024年7月に中部圏開発整備地方協議会が国あてに要望を行っています。連名は富山・石川・福井・長野・岐阜・静岡・愛知・三重の8県知事と名古屋・静岡・浜松市長という錚々たるメンバーです。

 伊勢湾口道路については「所要の調査を推進し、早期事業化を図ること」と求めています。

 ※ ※ ※

 首都圏における「近くて遠い存在」神奈川~房総半島をつないだ「東京湾アクアライン」は、物流や観光、通勤通学など、人々の移動のあり方を大きく変化させました。

 おなじく東海地方、はては近畿地方の「近くて遠い存在」をつなぐ「伊勢湾アクアライン」というべき伊勢湾口道路計画は、果たして第一歩、また「一歩目の足上げ」を始めるのはいつになるのか、まずは総合計画で示された「おおむね10年間」の動向に注目です。

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