ホンダは過去の東京モーターショーで、個人ユーザーが趣味で自由に使うといったコンセプトの軽トラックを披露していました。どのようなモデルなのでしょうか。
■軽トラと軽バンを融合させた「ホビック」 市販化は叶わず
軽トラックは長年に渡り、配送業や農業などの現場で活躍する「仕事道具」でしたが、近年では趣味やアウトドアレジャーの相棒として、一般ユーザーからも強い支持を受けています。
いっぽう、国内メーカーの各社はかねてから一般ユーザーも使えるカジュアルな軽トラックを模索しており、残念ながら登場に至らなかったケースもあります。そのひとつがホンダ「HOBICK(ホビック)」です。
ホビックは2004年に開催された第38回「東京モーターショー2004」で世界初公開された軽トラックのコンセプトモデルです。
当時のホンダは「オフタイムに快適、便利に働く、趣味のためのマイトラック。」としており、“趣味のためにとことん使い尽くせるトラックがあってもいい”、そんな発想を具現化したと説明します。
ボディサイズは全長3395mm×全幅1475mm×全高1880mm、ホイールベースは2420mmで、乗車定員は2名です。
ベースは、当時ホンダから販売されていた軽バン「バモスホビオ」で、広々とした室内高を持つハイルーフなキャビンを持ちますが、最大の特徴は、ボディの中央から後部にかけて、荷台を持つ軽トラックに仕上がっている点です。
また、その荷台も単に軽トラックのような構造になっているのではなく、「カーゴシェル」という、上から被せるタイプの網のような仕切り板を搭載。
これにより、カーゴシェルの下は例えば畳んだテントなどの薄い荷物を積載し、カーゴシェルにはマウンテンバイクなど、たためない大型の荷物を固定して積載できるなど、アウトドアでも大活躍しそうな画期的な荷台を実現していました。
さらに、荷台からキャビンはトランクスルーのような仕切り付きの貫通構造をなっており、これを外して助手席を格納すれば、最大2500mmもの長尺物を積載できる点もポイント。
そのため、サーフボードやスキー板だけでなく、大きなベニヤ板や脚立などもすっぽり収まり、まさに趣味と仕事を1台でこなせるような構造になっていたのです。
エクステリアもバモスホビオとは共通性を感じるも、独特のデザインをまとっており、ボディカラーもポップな蛍光グリーン1色。ホイールもスポークの内側がボディと同じグリーンのアクセントが施され、近未来感と遊び心を感じさせます。
フロントフェイスは奥行きのあるスケルトンのグリルガーニッシュと2灯の横長の灯体で構成されるヘッドライトを装着。ライトとグリルが一体化したデザインで、非常に斬新で未来的なスタイリングです。
テールランプも同様で、ボディサイドから続くブラックとスケルトンのガーニッシュが一体化したもの。軽トラックでありながら日常使いもこなせるファッショナブルなスタイルとしていました。
インテリアも同様にポップにデザインされ、蛍光グリーンのシートやインパネ、ドアトリムを装着したほか、エアコン操作部やシートの取り付け部周辺の加飾などもグリーンに揃えられ、楽しい雰囲気を演出しました。
ちなみに、当時のイメージ画像では、カヤックと自転車が積載され、室内にはシューズなどのアウトドアギアを収納。アウトドアの多彩な趣味を持ち、非日常をエンジョイする若者を想定したイメージとなっていました。
そんなホビックは、コンセプトカーとはいえ非常にリアリティのあるものだったことから、市販化も期待されましたが、残念ながらこのホビックは市販されることはなく、バモスシリーズも2018年に生産終了。
登場から20年が経過した今、キャンプなどのアウトドアレジャーが一般化し、さらには地方への移住や副業といった新しいライフスタイルが定着。
そこで、趣味や仕事の相棒として、広い荷室やシンプルな構造の軽トラックや軽バンをカスタムし、すべてを1台でこなすような一般ユーザーも増えました。
さらには、ハイルーフの軽トラックとして、スズキ「スーパーキャリイ」やダイハツ「ハイゼットジャンボ」など、従来の軽トラックにはなかった広い居住スペースを確保するモデルも人気です。
当時としては異例なアイデアだったのかもしれませんが、今登場すればもしかしたらヒット車となっていたかもしれず、登場が早すぎたクルマといえそうです。