交通違反を取り締まるという立場上、警察車両には模範的な運転が求められますが、SNS上においてはたびたびパトカーの運転について「スピード出しすぎ」、「駐車禁止の標識の真下に止まってたけど違反にならないの?」といった指摘も聞かれます。ではパトカーが交通違反に当たる運転をしていた場合、交通取り締まりの対象となるのでしょうか。
■たとえ緊急自動車であっても「やっちゃいけないこと」って何?
日々、警察官による交通取り締まりが全国各地でおこなわれています。
では、もしパトカーが交通違反をしてしまった場合、取り締まりの対象となるのでしょうか。
交通違反を取り締まるという立場上、警察車両には模範的な運転が求められますが、SNS上においてはたびたびパトカーの運転について「スピード出しすぎ」、「駐車禁止の標識の真下に止まってたけど違反にならないの?」といった指摘も聞かれます。
ではパトカーが交通違反に当たる運転をしていた場合、交通取り締まりの対象となるのでしょうか。
結論から言うと、たとえパトカーであっても交通違反をすれば一般の車両と同様、交通取り締まりを受けることになります。
実際のところ2023年11月には、緊急の用務でないにもかかわらず覆面パトカーで高速道路を時速165キロという猛スピードで走行したとして、京都府警の男性警察官が道路交通法違反(速度超過)の疑いで書類送検されています。
同事案は警察官が制限速度80キロの道路を約85キロオーバーで走行したもので、当時通行していた別のドライバーから京都府警に対し「パトカーがすごいスピードで追い越していった」という苦情が寄せられたことにより発覚しました。
なお、運転していた30代の男性巡査長については減給10分の1(3か月)、助手席に乗車していた男性巡査に対しては本部長訓戒の処分が下されています。
この事案のように、一般市民から通報されて発覚するケースは少なくないといえるでしょう。
しかしパトカーが「緊急自動車」に該当する場合は、原則として交通違反の適用から除外されます。
緊急自動車とは事件・事故など緊急用務のために運転中で、赤色警光灯を点灯させ、サイレンを鳴らして走っている車両のことをいい、パトカーだけでなく救急車や消防車などの車両も挙げられます。
仮に強盗事件やひき逃げといった重大事案が発生した場合、パトカーは急いで現場に駆けつけるため緊急走行をしますが、それに際してパトカーが信号無視や通行禁止道路を走行するなどしても交通違反には当たりません。
ただし緊急走行中だからといってすべての違反が許容されるわけではなく、歩道を通行したり、急ブレーキをかけたりするような運転が禁止されているほか、事故を起こした際の停止・救護義務などがあります。
そのためパトカーで緊急走行をする警察官に対しては、見通しの悪い交差点での一時停止や十分な安全確認などが求められています。
そのほか、各都道府県の道路交通規則によって警察車両が交通規制の対象から除外されるケースもあります。
たとえば東京都道路交通規則の第2条では、「通行禁止」や道路標識による「駐車禁止」の規制などから除外されるものとして、次の車両を明記しています。
「犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締り、警備活動その他警察活動のため警察職員が使用中の車両」(条文を一部抜粋)
つまり、警察官が車両を犯罪捜査や交通取り締まりなどの活動に使っているときは、通行禁止場所の走行や駐車禁止場所への駐車が基本的には可能になるといえます。
とはいえ、この規定では交差点内や横断歩道付近など「法定の駐停車禁止場所」への駐車は許容されていないことから、警察官1人1人が交通違反をしないよう注意すべきといえるでしょう。
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パトカーが交通違反をすると交通取り締まりの対象となるものの、緊急走行中や犯罪捜査など一定の条件下では交通違反が適用されないケースもあります。
最近では緊急自動車と一般車両の事故もたびたび発生しているため、互いに安全確認を怠らない心がけが大切です。