昨今「レトロ」や「カクカクなスクエアデザイン」が注目されています。トヨタ「ランドクルーザーシリーズ」やスズキ「ジムニーシリーズ」はその筆頭です。なかでも発表からわずか4日で受注停止となった「ジムニーノマド」と2025年夏に受注再開と噂される「ランドクルーザー70」にはどのような違いがあるのでしょうか。
■話題のレトロ×カクカクなデザイン! ランクル70とジムニーノマドの違いは?
2025年1月30日にスズキは新型「ジムニーノマド」を発表し、同年4月に発売するとアナウンス。
しかし、わずか4日後には「現在、販売計画台数を大きく超える約5万台のご注文をいただいています。この状況を鑑みて、ご注文の受付を一時的に停止させていただきます」とアナウンスするなど異例の事態に。
その一方で「2025年夏に受注再開」を期待されているのがトヨタ「ランドクルーザー70」です。
ジムニーとランクル70は、ともに昨今の「レトロ」「カクカクなスクエアデザイン」という観点から幅広いユーザーから支持されていますが、どのような違いがあるのでしょうか。
日本の自動車市場には多種多様なモデルが投入されています。
ここ数年、出せば当たると言われているカテゴリーが「クロスカントリー4WD」です。
2018年にスズキ「ジムニー」「ジムニーシエラ」の現行モデルが投入されて以来、しばらく“休眠状態”だったこのカテゴリーが再燃しました。
1980年代から1990年代にかけても、“四駆ブーム”というムーブメントがありましたが、この時は社会問題を巻き起こすまでに。
結果的には、東京都が主に推進したNox規制や、ガソリン高騰化によってブームは沈静化。
今回もキャンプブームがその市場拡大を後押しするなど、前回の四駆ブームに似ている部分がありました。
しかし、ジムニーの成功に関していえば女性ユーザーが支持したことが大きな要因になっており、従来とは違う世情が需要の伸びに繋がっているようです。
ちなみに、「クロスカントリー4WD」の定義がよく分からないという人もいると思います。
その名の通り、道さえない場所を走行するために造られたクルマの総称で、第二次世界大戦で活躍したウイリス「MB」とフォード「GPW」、いゆわゆるジープがその源流となっています。
日本では戦後直後、警察予備隊(現陸上自衛隊)が採用する小型車のために国産メーカーが試作車と製造。
この中にはトヨタ「ランドクルーザー」の祖となる「BJ型ジープ」や、日産「サファリ」の祖となる「4W61型パトロール」なども含まれていました。
クロスカントリー4WDと言えるクルマを要約すると、「ラダーフレーム構造である」、「前後、もしくはリアがリジッドアクスル式サスペンションである」、「より大きな牽引力を発生できる副変速機(サブトランスファー)を持つ」ということになります。
昨今ではランドローバー「ディフェンダー」のように、モノコックボディかつ前後サスペンションが独立懸架式というモデルも登場しています。しかし、これは希有な例と言えるでしょう。
前述の条件から見れば、日本市場ではトヨタのランドクルーザーシリーズとスズキのジムニーシリーズ。
そしてピックアップトラックではトヨタ「ハイラックス」と三菱「トライトン」という状態です。
現在、様々なクロスカントリー4WDが日本で販売されているわけですが、モデル自体のコンセプトや実際の市場での使われ方、車両の構造などを考えれば、“生粋”と言えるのはランドクルーザー70とジムニーシリーズだけと言えそうです。
トヨタは、「ランドクルーザー70」(以下ランクル70)を2023年11月に約8年ぶりに日本で再々販売しました。
しかし、2年間の生産分に対して注文が殺到。現在は受注停止となっています。
スズキは2025年1月に5ドアモデル「ジムニーノマド」(以下ノマド)の日本導入を発表。
想定を上回る約5万台の受注でわずか4日後に受注停止となるほど、注文が殺到しました。
一見するとカテゴリーが違う両モデルですが、それぞれどんな特徴があるのでしょうか。
まずボディサイズですが、ランクル70が全長4890×全幅1870×全高1920mmの3ナンバー普通乗用車であるのに対して、ノマドは全長3890×全幅1645×全高1725mmで5ナンバー小型乗用車です。
当然乗車定員も異なり、ランクル70が5名なのに対して、ノマドは4名に留まっています。
エンジンもまったく違うもので、ランクル70は2.8L直4ディーゼル、ノマドは1.5L直4ガソリン。動力性能に大きな差があります。
サスペンションは両モデルとも前後リジッドアクスル式ですが、ランクル70は前がコイルスプリング、後にリーフスプリングなのに対して、ノマドは前後コイルスプリングを使っています。
ランクル70は、リアに大きな荷重がかかることを想定しているためと、ノマドよりも僻地で使われることを想定し、緊急時対応を考慮してのことです(ただし日本仕様は2枚リーフ)。
日本では別キャラの2モデルですが、クロスカントリ−4WDの一大市場のひとつであるオーストラリアでは、共に高い評価を受けています。
特に「ジムニーXL」の名で販売されているノマドは、そのコンパクトなサイズからアグリカルチャーの現場において重宝されていると聞きます。
一方の日本では、ファミリー層の注文が多いようです。
日常的には買い物くらいにしか使わなくても、週末は家族でオフタイムを楽しみたいというユーザーが購入するというのが、両モデルに共通して言えることのようです。
ただ、両モデル購入者にはこんな違いもあると、関東圏にあるスズキ系販売店の営業スタッフはいいます。
「ノマドを注文いただいたお客様の中には、『本当はランクル70が欲しいんだけどね』という人が結構いらっしゃいました。
しかし、ランクル70は価格が480万円、自動車税も年間で1万6000円(居住地で異なる)も高いとなると、二の足を踏む人が多いようですね。
その点、ノマドはジムニーの中では安くはありませんが、200万円台後半とお買い得感も。
4名乗車定員で荷物もランクルほど載せられませんが、今の日本の生活サイズに合ったクルマだったので、5万台もの注文が入ったのではないでしょうか」
■細かく違いを見る! ランクル70とノマドはこんなに違う!
ランクル70とノマドを比較してみると、やはり価格差分の違いはいろいろな部分に出ています。
単純にエンジンを見ても、コスト高なディーゼルエンジンをランクル70は搭載。
またランクル70が本格的なクロスカントリー走行を可能にするメカニカルなデフロックを採用しているのに対して、ノマドはABSのメカニズムを発展させたブレーキLSDトラクションコントロールの採用に留まっています。
さらに言えば、ランクル70がATの搭載や3ナンバーワゴン化に際して、騒音・耐震対策、サスペンションの見直し、フロント設計変更などを徹底的に行ったのに対し、ノマドはシエラからの変更を極力最小限に留めています。
ですが、ノマドが200万円台後半で販売されていることは、大きな評価ポイントです。
シエラからの変更は快適性や安全性の面に重点が置かれ、ジムニーシリーズの中ではもっとも乗りやすいクルマに昇華させています。
また、AT車にはアダプティブクルーズコントロールが採用されていますが、これは格上と言えるランクル70にもない装備です。
ボディサイズや排気量を考えると、ノマドは日本で無理なく乗れるクロスカントリー4WDと言えます。
5ドアになったことで、老若男女とも快適に乗降できるようになりました。
燃費は必ずしもいいとは言えませんが、ランニングコストはまずまずです。
一方、ランクル70はそのブランド力は圧倒的です。
ファンなら人生1度は乗ってみたいと思えるクルマなのではないでしょうか。
しかし、圧倒的な悪路走破性ゆえの高いフロアは、子どもや高齢者には乗り降りが大変。
従来モデルと比べると格段に快適になった乗り心地も、一般ユーザーには“硬い”という評価が多いようです。
そんなことを考えると、やはり「ランドクルーザー250」に比べれば、70は本格派ゆえに一定の敷居の高さがあるのかもしれません。
現在、ノマドは“買えない状態”、ランクル70は今夏に受注再開と言われています。
もしかすると、「ノマドが買えなかったから70」というユーザーもいるかもしれません。
ただ、もし購入を考えるのであれば、ランクル70はノマドほどユーザーフレンドリーではないことも知っておいたほうがいいかもしれません。