実は絶不調だった。全日本フィギュアのフリー当日。坂本花織は昼の公式練習でジャンプが決まらず、いらだつ様子で涙を流しながら会場を離れた。それでも世界女王は勝負強かった。もがいた先につかんだ3連覇。「どうなるかという気持ちがすごくあったが、最後まで大きなミスなく滑ることができたので、すごくほっとしている」と歓喜の夜を迎えた。
SPで約9点リードしても、緊張感を持って最終滑走に臨んだ。ダイナミックな2回転半で幕を開けると、次々とジャンプを決める。技術点、演技点とも1位と他を圧倒した。非公認ながら自身の今季世界最高得点を上回り、腕を思い切り振り下ろして喜びを爆発させた。
苦悩と闘ってきた。初制覇した今月のGPファイナル後には「何でトリプルアクセルも4回転もないのに世界女王やねん、って言われることもあるけど、それは自分が一番分かっている」と吐露。それでも「大技を見たければ花織を見なくていい」と割り切った。
「自分の見せ方を追求し、結果となって表れた。それが今シーズンの自分の強み」。唯一無二の存在だと再確認できた。