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ゲノム編集活用で塩害、冠水に強いイネ開発 島根大、GABA増で「災害でも安定栽培」

共同通信 2024年7月4日 7時3分

 島根大の研究グループは、睡眠の質向上や高血圧改善などの効果が認められているアミノ酸「GABA」を使い、塩害や冠水など過酷な環境に耐えられるイネを開発した。(共同通信=白神直弥)

 ゲノム(全遺伝情報)編集技術を使ってGABAを人工的に増大、赤間一仁・島根大教授は「自然災害にさらされても安定的に栽培ができるようになるのでは」と話す。

 GABAは認知症予防や睡眠の質を高める効果で知られ、配合した食品も発売されている。植物がストレスを感じると細胞内で蓄積され、直接葉に吹きかけて散布すると乾燥などに耐性を示す。

 グループはGABAの合成を助ける酵素に着目した。米の栽培種の一つ「日本晴」を使い、狙った遺伝子を書き換えられるゲノム編集の技術「クリスパー・キャス9」で特定の遺伝子の一部分を除去。その結果、酵素が活性化し米粒内のGABAが約9倍に増えた。

 さらにストレス耐性効果を確かめるため、ゲノム編集したイネと未編集の同種に(1)根元を塩水につける(2)全体を水に浸す(3)乾燥させて、水分を抜く―という3種類の環境を用意。土に植えて17日目の様子を観察した。

 その結果、イネの生存率は(1)の編集したものが44%で、未編集は17%だった。(2)と(3)でも編集したイネが高かった。同様のストレス実験後にGABAは増えており、GABAが生存率を高めたと考えられるという。

 一方、もみの量は増えたが、実が入っていない割合が増えることが分かった。実入りが悪いと品質が落ちる傾向があり、今後の課題だ。また別品種と掛け合わせて味の改良も進める。ゲノム編集を担ったバングラデシュの留学生ナディア・アクターさんは、母国でイネの研究に従事する予定で「学んだことを農業で役立てたい」と意気込んだ。

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