北海道幌加内町の農場が、生産から販売まで一貫して手がける「6次産業化」で新たな和牛ブランドを誕生させた。「自分で育てた牛は食べたことがなく、実際おいしいのか知りたかった」。特産のそば粉を飼料に混ぜるなど試行錯誤を重ね、柔らかく、脂がさらっと溶ける肉質に仕上がった。(共同通信=野島奈古)
新ブランド「ほろかない和牛」を手がけるのは「市村ファーム」の社長市村良治さん(46)と、8年前に地元に戻った兄智康さん(47)。両親とともに、和牛として出荷する牛の繁殖や子牛の育成に加え、ソバも栽培する。
良治さんらによると、和牛は通常、生後9カ月ほどで肥育農家に渡り、育てられて出荷される。同社は新しい牛舎を建設した2022年に6次産業化を開始。肥育の経験は全くなく「未知の領域だった」が、知り合いに助言をもらい、病気にならないよう、与えるビタミンAの量を少しずつ変えるなど、肉質の向上に努めた。
同町はソバの作付面積が全国一。地元の特産品を使わない手はないと思い、加工で出てしまう廃棄予定のそば粉を飼料に混ぜた。智康さんによると、ミネラルとビタミンを補う役割を担っているのだという。
一貫生産は、少ないストレスで育て上げることができるメリットがある。2人は初めてサーロインステーキを試食した時のことを振り返り「臭みが薄く食べやすい。よかった」と満足げ。生産者と消費者にとっても「安全安心につながる」と考えている。
今年2月に2頭を市場に初出荷。現在は旭川市に直売店を構えるほか、ホームページでの販売に向けた準備も進めている。「完全なる町内産の和牛として知名度を上げていきたい」と奮闘する。