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障害者ダンスバトル「勝敗にハンディなし」 松葉づえステップ、手拍子見てリズム

共同通信 2024年10月13日 18時4分

 アップテンポな音楽が鳴り響く。熱狂の渦の中心ではダンスバトルが繰り広げられている。ある出場者は車いすから降りたかと思えば、腕力で体を支えてポーズを決める。神戸市で9月に開かれた障害者限定の大会。体を回したり跳ねたりするブレイキンや、激しい動きから突然静止するロックダンスが次々と披露され、観客を沸かせていた。

 主催したのは、主にアートを通じた障害者イベント事業などを行っている「日本アダプテッドブレイキン協会」(大阪市)だ。代表理事の高橋俊二さん(41)は「オリジナリティーさえあれば誰でも踊れる。ダンスの勝敗にハンディはない。言い訳ができない真剣勝負だ」と訴える。(共同通信=小町梨央)

 高橋さんは独学でスキルを身に付け、プロダンサーとして世界で活躍してきた。協会を立ち上げたのは、障害の有無に関係なくダンスの楽しさを伝えるためだ。「社会が障害を理由にハードルを上げて、選択肢を奪ってしまっている」と悔しさを感じていた。

 どんなジャンルのダンスを選ぶかは障害の程度で決めない。ダンス講座の受講生一人一人に「個性」に合ったものを伝えている。足が不自由でも松葉づえを使うことでステップダンスができる。決まったパターンはない。「一つの正しさしかないと選択肢がなくなってしまう。ダンスはそろえることだけが目的ではない」と高橋さん。

 協会主催の大会では、必ずプロの審査員を呼ぶことにしている。障害があるからといって、一般と違う評価基準にはしたくないという。

 この日の大会で優勝したのは、京都府でIT関係の仕事をしている福山寛太さん(23)だ。3歳からダンスを始めた。聴覚障害があるため、観客の手拍子などを見て、リズムを取る。その動きはまるで音楽が聞こえているようだった。

 優勝者には来年2月に開催される障害者ダンスバトルの世界大会の出場権が与えられる。福山さんは「決勝を目指して頑張りたい」と大会への意気込みを語った。

◎ブレイキン

 1970年代の米ニューヨーク貧困地区で生まれたストリートダンスの一種で、ギャングの抗争を暴力ではなく踊りの対決で解決したのが起源とされる。アクロバティックな回転技が特徴。1対1のソロで戦うものや大人数のチーム戦など形式はさまざまだ。パリ五輪では競技種目として初実施され、日本の湯浅亜実選手(25)が金メダルを獲得した。

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