地域住民から難民まで、国内各地から集まった多様な背景を持つ人々が一つになって楽しむ運動会が、新潟県十日町市で開かれた。7~11月に十日町市などで開催されている「大地の芸術祭」の一環として、今回が初開催。家族や地域を巻き込み、団体競技も行う日本独特の「運動会」のスタイルが、国籍や年齢、性別を超えるきっかけとして期待されている。(共同通信=井上慧)
残暑厳しい9月上旬、山々に囲まれた十日町市のグラウンドには、24の国と地域から約500人もの老若男女が集まった。十日町市のNPO職員山田綾さん(45)は「地元の小学校の児童数は80人ほど。こんなに多様な人が集まることはなかった」と、盛況ぶりに目を丸くする。
玉入れや大縄跳びなどの定番競技の他、発泡スチロール製の巨大な「おにぎり」を転がすリレーなどで競い合い、歓声が飛び交った。芸術祭参加のアーティストがチームごとの応援旗をデザインし、市民楽団の演奏が熱気を後押し。昼休みには全員で県産コシヒカリのおにぎりを☆(順の川が峡の旧字体のツクリ)張った。
マリ出身のアダムス・ケイタさん(43)は「マリにも運動会はあるが、こんなに多くの人と楽しむのは初めて」と話す。ウガンダから難民として来日した母を持つ、中学2年のリティック・アマラシンガさんは「新しい友達がたくさんできた」と笑顔を見せた。
「参加度が高く、年齢も関係ない。いろいろな人がつながるには『運動会』が一番いい」と話すのは、芸術祭の総合ディレクター北川フラムさん(77)。「2~3カ月かけて準備した。みんな楽しんでくれてよかった」と手応えを口にした。
難民支援イベント「難民・移民フェス」実行委員で、運動会にも参加した文筆家金井真紀さん(50)によると、難民の中には、言葉の壁や母国で危険な経験をした影響で、日本人とも日本にいる母国出身者ともつながりを持てず、孤立してしまう人もいるという。
金井さんは「日本人にも、難民の存在は知っているけど直接会ったことがないという人は多い。難民のニュースを見たら『一緒に運動会をした人だ』と思い出してほしい。多くの人に難民問題を身近に感じてほしい」と話した。