茶わんやボウルなど日用品から作ったオリジナル楽器を奏でる2人組ユニット「kajii」が、愛知県大治町を拠点に全国でコンサートを600回以上重ねている。モットーは「観客と面白さを共有すること」。聞くだけでなく、見て触って楽しむ新しい音楽を届けている。(共同通信=吉田有美香)
2024年9月上旬、名古屋市北区の公共施設。「クマーマ」こと熊谷将さん(40)は円形テーブルにぎっしりと並べた茶わんを菜箸でたたき、「創」こと原創平さん(36)は4本の木製スプーンをカスタネットのように鳴らした。茶わんからは鉄琴のような高音が、スプーンからは乾いた楽しげな音が響いた。
集まった数十組の親子は、カジーが披露する「トルコ行進曲」にくぎ付けに。小学生の娘と訪れた女性は「こんなに本格的な演奏と思わなかった」と驚き、コンサートの終わりには会場から大きな拍手が湧いた。
2人は愛知県出身で、東京でそれぞれ音楽活動をしていた。2011年ごろ、自宅キッチンにあった食器をたたいたところ、同じデザインでも音が違うと気づいたクマーマさん。創さんを誘い「ド、レ、ミ…」の音階を完成させることにした。
100円ショップをはしごした2人。2013年に29個の食器で約2.5オクターブをカバーする最初のオリジナル楽器「食琴」を完成させ、演奏する様子を動画投稿サイトに公開した。その後、コンサートで全国を回る。
金ダライとデッキブラシをこたつのコードで結び、大太鼓のような低音を出す「タライUFO」や、まな板やボウルを金属ラックにぶら下げたパーカッションセット「ヒミツキッチン」など、これまで生み出した楽器は170種類を超える。
「意外な道具から思いも寄らない音が出る。見た目とギャップがあるほど面白い」と創さん。コンサートではオリジナル楽器を観客に配り、演奏に参加してもらう。近年、子ども向けに楽器作りのワークショップも始めた。クマーマさんは「子どもたちに自分で一から生み出す楽しさを知ってもらえれば」と話した。