名古屋市立大や国立がん研究センターなどは5日、手術前の乳がん患者で新薬の有効性を調べる医師主導治験を始めたと発表した。従来は各薬剤を別々の臨床試験で評価するため時間がかかっていたが、今回は試験中に薬剤を追加できるなど複数の新薬を同時に評価可能な仕組みを採用しており、迅速な承認が期待できるとしている。
欧米では承認されているが日本では承認されていない医薬品は多く、乳がんでも国内で承認されない「ドラッグロス」や、承認が遅れる「ドラッグラグ」が懸念されている。能澤一樹・名市大特任講師(先端医療・臨床研究開発学)は「より多くの患者さんに参加してもらい、ドラッグロス解決の糸口につなげたい」と話した。
治験では、18~80歳でステージ2~3などの要件を満たした手術前の乳がん患者に新薬を投与し、標準治療と比較して効果があるかどうかを確認する。手術後も調査研究を行う。6月から、特に治療が難しいタイプのトリプルネガティブ乳がんの患者へ治験を始めており、新たな治療薬の候補があれば、違うタイプの患者へも順次実施する。