タンパク質に「リン酸」を付けたり除いたりして働きを調整する三つの酵素が、哺乳類の睡眠と覚醒を制御していることが分かったと、東京大などの研究チームが6日付の英科学誌ネイチャーに発表した。脳内の神経細胞で酵素が作用し合い、1日の睡眠時間が調整されているとみられる。
上田泰己・東京大教授(システム生物学)は「睡眠時間や眠気の解明につながる重要な一歩だ。将来的に医薬品の開発に生かしたい」と話した。
タンパク質にリン酸を付ける「リン酸化」が睡眠に重要な役割を果たすことは知られていたが、詳しいメカニズムは不明だった。チームは、ショウジョウバエで睡眠や覚醒に関わることが確認されていた複数の酵素に着目した。
リン酸化酵素「PKA」が、脳で常に働くようにしたマウスでは、深い睡眠の時間や眠気が減少。一方、タンパク質からリン酸を除く「脱リン酸化」の酵素「PP1」と「カルシニューリン」を恒常的に働かせると、睡眠時間と眠気が増えた。カルシニューリンはカルシウムを感知して働く。