山口県美祢市にある日本最大級の鍾乳洞・秋芳洞で近年、鍾乳石が緑に変色し問題になっている。主に観光用の発光ダイオード(LED)照明により、従来目立たなかった藻類や細菌の繁殖が進んだためで景観や生態系への影響が懸念される。市は環境を保全しつつ来訪者の安全や満足度を満たす対処法を模索する。(共同通信=松本晴一郎)
国の特別天然記念物に指定され、「山口の宝」とも呼ばれる秋芳洞は大きな経済効果をもたらす観光資源。1920年代から電気照明が使われるようになった。
記録によると、照明の導入当初からシダなどの植物の繁殖が報告されていたが、藻類などによる緑の変色が目立つようになったのは2010~11年にLED照明に切り替えてからだという。光の波長の変化が藻類の繁殖を促進しているとされる。
変色を嘆く声は来訪者からも聞こえた。約30年ぶりに訪れた宇都宮市在住の朝倉優(あさくら・すぐる)さん(61)は洞内の目玉の一つとされる黄金柱(こがねばしら)を見て、今も立派だとしながらも「もっと黄色の強い見た目だった」と残念がった。
美祢市は対策のため、2019年から専門家による委員会を設置、光を長時間当てないことが有効などとする結果をまとめた。
2022年度からは結果を受け、再生事業評価委員会が、石灰岩や、洞窟内の固有種の虫などに影響を与えずに藻類を除去・減少させる手法を実証実験中だ。
市は秋芳洞を含めた一帯について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界ジオパーク」申請も目指す。再生事業評価委員会で委員を務める山口大の堀学(ほり・まなぶ)教授(生物学)は「秋芳洞の必要性や保全の重要性を多くの方に理解していただくことが不可欠」と指摘する。