タイ矯正局が首都バンコクの刑務所で、LGBTQなど性的少数者の受刑者に配慮した取り組みをメディアに公開した。セクハラ防止が狙いで、2021年から取り組みを強化。タイ全土では約千人が同様の対応を受けているという。2025年1月に同性婚を認める法が施行予定で、受刑者対応でも「LGBTQフレンドリー」をアピールした。(共同通信バンコク支局=伊藤元輝)
「雑居房やトイレ、身体検査など全てで配慮し対応している」。矯正局のサハカーン局長は2024年8月上旬、約千人を収監するクロンプレム中央刑務所で報道陣を前に強調した。出生時の性別と性自認が異なるトランスジェンダー専用房が並び、扉に収容者の特性を識別する表示もあった。
性別適合手術の進捗状況に応じてグループ分けする対応などを紹介。矯正局は特に性自認が女性のトランスジェンダーの人に配慮する。性別適合手術などを経て女性の容姿となった人を男性房に収容すると、男性受刑者からセクハラ被害を受ける危険性があるためだ。タイでは手術を受けても、戸籍上の性別を変更する制度がない。
対象者は約60人で(1)性別適合手術を完全に終えている(2)手術を終えていないが豊胸などは済ませている(3)手術はしていないが性自認が女性と判断できる―の3グループに大別。それぞれに専用房を設け、シャワーなどの時間を分ける。一方で日中は男性受刑者と同じエリアで過ごす。
報道公開ではトランスジェンダーの受刑者も、当局の監督下で取材に応じた。人身取引に関わった罪により服役中で、男性から女性へ手術済みのベレさん(31)は「収監前は男性と一緒の房になるのではないかと不安だった。分けてくれてありがたい」と話した。