町の中心部を巡る農業用水路「大堰」がシンボルの山形県金山町。書店や専用施設の図書館がなかったこの町に水曜日だけ、移動式の小さな本屋「かぷりば」がオープンする。「本を通して町内外の人が交流できる場所をつくりたい」と、地域おこし協力隊の川村佳恵さん(24)が始めた。(共同通信=島田海)
店名は春になると大堰に放たれるコイ(カープ)と、名前の川の字(リバー)から。お客さんへのアンケートを参考に仕入れた絵本や哲学書、地域で採れる山菜が使えそうなレシピ本など、バラエティー豊かな約100冊が並ぶ。
盛岡市出身。幼い頃から読書が好きで、まだ知らない本を発掘するのも好きだった。書棚や店主との語らいが、意外な本との出合いを提供してくれる「町の本屋さん」は大切な場所だった。
東京の会社で地方自治体のイベント企画に携わるうちに「地域の中に入って働きたい」と思うようになり、協力隊として2024年4月、町へ移住した。
会計年度任用職員として、継続的に地域と関わってくれる「関係人口」創出を目指す中、町内には一軒も本屋がないことに思い当たった。買い物客だけでなく、住民や観光客が気軽に立ち寄って交流する、そんな場をつくりたいと、どこへでも身軽に出店できる移動式の本屋を発案した。
学生時代に通った東京都世田谷区の書店「ワープホールブックス」の委託販売を請け負う形で、利益は同書店に全額還元する。毎週水曜日に、カフェの一角を間借りして開店するほか、イベント会場への出店や読書会の開催も行う。
将来は自分の店を構えるのが目標。手に取ってくれる人を思い浮かべながら選書するのが何よりの楽しみだ。「売り物だけど、プレゼントを選ぶ感覚」。ここでしか出合えない本、人にこだわり続ける。