「高知の皿鉢(さわち)文化を時代に合わせて残したい」。有名ホテルで腕を磨いた高知市出身の料理人近藤大地(こんどう・だいち)さん(35)が今年、店舗を持たない出張型のレストランを地元で開業した。
皿鉢料理は大皿に色とりどりのおかずを盛り付け、大勢で囲む高知の伝統料理。現代風にアレンジし、次の世代に引き継ごうと奮闘している。
近藤さんは高校卒業後、専門学校で調理、製菓を学んだ。レストラン勤務などを経て、京都の高級ホテルで副料理長を務めた。世界中の系列ホテルで活躍する料理人のコンテストでは、アジア、オセアニア地域のトップ3に選ばれた経験もある。
高知で独立したいと考えていた近藤さん。今年6月にホテルを退職すると「おいしいだけでなく、料理を楽しむ場を提供したい」と考え、8月に出張型レストラン「UZU(ウズ) K(ケー)」を立ち上げた。
高知はお酒を飲む人が多い土地柄だが、車社会。自宅ならばお酒を我慢せずに済み、外出が難しい高齢者もお店の味を楽しめる。料理人が出向くことで、顧客とのつながりを強めることも狙いだ。
食材の生産者と密にコミュニケーションを取り、農園などにも足を運ぶ。出張では料理の説明だけでなく、食材の背景も伝える。「料理は中間地点。人と人のつなぎ役です」と語る。
皿鉢料理は正月や七五三などの祝い事で大勢が集まる際に親しまれてきた。近藤さんは自身が得意とするフランス料理やデザートを大皿にずらりと並べ、従来のスタイルとは一線を画す。「食文化は変わらないと残らない。皿鉢を囲む楽しい空間をつくりたい」と力を込める。