北海道浦臼町にある樺戸山金剛寺(かばとざんこんごうじ)の住職が、法話と演奏を組み合わせた「ピアノ法話」や、金融業界での経験を生かして投資の知識を解説する講座を開くなど、地域住民との距離を縮める取り組みを行っている。お寺の檀家(だんか)離れが全国で進む中、米田弘教(よねた・こうきょう)住職(45)は「住職が橋渡し役となり、地域の人たちが仏教の教えに触れ、生きる糧にするきっかけになれば」と笑顔を見せる。(共同通信=田代展嵩)
前住職の次男である米田さんは筑波大卒業後、大手証券会社で営業マンとして10年以上働いていた。「親孝行の意味でも、父親が守ってきた寺を継ごう」と考え、2014年に退職。1年間の修行や僧侶としての奉職の後、2018年に住職となった。高校時代から町を離れて北海道外で過ごしてきた米田さんは、過疎化が進む町の姿に「地域が活性化されないと、寺も維持できない」と危機感を覚えたという。
ピアノ法話は、新型コロナウイルス禍もあって寺に足を運ぶ人が減る中、「今までお寺と関係ないと思っていた方にも来てもらいたい」と2022年10月から始めた。ピアノの全国大会で優勝した経験を持つ米田さんが法話の合間に演奏を披露。法話にも耳を傾けてもらい「人生に役立つ仏教の知恵みたいな部分を持ち帰ってもらえれば」と話す。
前職の経験を生かして自ら講師を務める「金融基礎のてらこや」や、小学生を対象に1泊2日でお経の練習や瞑想(めいそう)などの修行を体験できる毎年恒例の「夏のてらこや」も好評だ。夏のてらこやは札幌など町外からの参加者が多く、受け付け開始から1時間で30人の定員に達するほど人気を集める。
ユニークな企画を行うたびに、これまであまり接点のなかった高校生や若い世代が寺に足を運んでくれるようになったという。米田さんの目標は「今後もお寺が地域と共にしっかりと根を張って」仏教の教えを伝えていくことだ。