能登半島地震で被災した家屋などの公費解体を巡り、所有者に無断で解体したケースが石川県内で6件確認されたことが13日、県への取材で分かった。うち5件は所有者が求めていた事前連絡をせず解体工事に着手していた。家財などを搬出できなかった被災者は「涙も言葉も出ず、何が起きたのか理解できなかった」と悲嘆に暮れる。
公費解体は、所有者と市町の担当者、業者が現場で立ち会い、解体の段取りを決める。県などによると、所有者側が事前に家財などを運び出すケースがあるため、作業の開始日や流れを伝えた上で着手するよう業者に求めている。
輪島市の本郷明夫さん(69)は自宅1階の店舗で40年以上はんこ屋を営んでいたが、元日の地震で全壊となり、6月に公費解体を申請した。はんこの材料となる象牙や彫刻刀、顧客データが入ったパソコンなどが残っており、製作再開に向け運び出したいと考えていたため、市や業者に事前連絡を依頼した。
だが、連絡がないまま7月4日、解体が開始。10日ほどでさら地になり、家財などは全て撤去されてしまった。