九州南部から台湾近海までの「琉球弧」の島々で醸される独特の発酵飲料「みき」の魅力を広めようと、沖縄県のNPOが奮闘中だ。健康飲料としての効能だけでなく、祭礼に使われてきた歴史など文化的側面にも着目。生活様式の近代化とともに廃れつつあるが、昨夏以降、島ごとに異なる製法を記録するなど継承へ力を入れ始めた。
みきの材料は鹿児島県・奄美群島ではコメやイモ、砂糖で、沖縄県糸満市はコメと麦芽、砂糖。宮古諸島ではコメと麦こうじ、沖縄県伊良部島はアワだけを使うことが多い。各地で材料も製法も微妙に異なる。酸味のある甘酒のような味わいが特徴だ。
その魅力にほれ込んだのが沖縄県・来間(くりま)島のNPO法人「来間島大学まなびやー」の砂川葉子理事長(49)。岐阜県出身で、約20年前に同島で開かれた豊年祭で初めて口にした。コメと麦こうじで醸されたみきを、神歌を歌いながら回し飲んだ。「何であるかも分からないまま恐る恐るいただいたが、意外とおいしかった」。以来、みきの魅力にはまり、製造、販売を手がけるようになった。
2023年7月、みきを次世代に継承するため、研究者や教育者らでつくる「琉球弧『みき』モノガタリプロジェクト」を発足させた。各地の離島をメンバーが訪れ、製法や祭礼での利用実態を調査している。
2024年10月7日以降は、鹿児島県・奄美大島や沖縄県糸満市、宮古島市でパネル展も実施した。30枚余りのパネルで奄美、沖縄の島々で異なる原料や造り方、集落や家庭で造られている様子などを紹介。202412月14、15日には石垣市で開催。
砂川さんは「個性と多様性がみきの魅力。琉球弧の象徴の一つであり、文化としてのみきを伝えていきたい」と語った。