薄いピンクに塗られた外壁の家に、親子連れが弾む足取りで入っていく―。福井県鯖江市の住宅街にある「おもちゃの図書館プティ」には、おもちゃ数百点と絵本約千冊がそろい、地元の子育て世代に人気だ。オーナーの西野有香さん(41)は「おもちゃを買う余裕がない家庭を支え、親子の笑顔が集まる場所にしていきたい」と語る。(共同通信=山田祐太)
シャンプー台やパーマ用の機器が残る室内に、アニメキャラクターが描かれたピアノや知育玩具が所狭しと並ぶ。「いろんなおもちゃがあって、子どもが喜ぶ」。11月23日、長男(6)を連れて遊びに来た同県越前町の40代の女性は頬を緩めた。
高校1年と小学6年の息子を育てる西野さんがプティをオープンしたのは、2019年12月25日。子育て仲間から「雨や雪の日に子どもを遊ばせる場所がない」という悩みを聞き「ないなら自分でつくろう」と立ち上がった。前年に亡くなった母親が営んでいた美容室を改装。「親子とおもちゃが結びつく日」として開館日にはクリスマスを選んだ。
子どもの興味関心はすぐ変わり、おもちゃにもすぐ飽きてしまう。「おもちゃ代は無視できない家計の負担になっている」と感じていた西野さん。入場は無料とし、1回300円、年会費1200円で2週間借りられるシステムにした。
おもちゃなどは併設のカフェの売り上げで購入するほか、家庭で遊ばなくなった中古品の寄付も受け付けている。娘(3)と月2回訪れる同県越前市の男性会社員(43)は「おもちゃを買っても、使わなくなるのは悲しい。お試しで借りられてありがたい」と話す。
オープン当初、年間2千人ほどだった利用者は昨年、3500人ほどまで増えた。利用者同士で顔なじみになることもよくあるという。西野さんは「子育てをしている方がいつでも来て、悩みや不安を共有できる場所を目指したい」と意気込んだ。