400年以上の歴史を誇る広島県福山市の福山城で、一日城主をコンセプトにした貸し切り宿泊のプランを市が実施している。
10月には初めての宿泊客があり、「タイムスリップしたようで楽しかった」と評判だ。市の担当者は「魅力や歴史を知ってもらいつつ、保全する意義を伝えていきたい」と話す。(共同通信=斉藤祥乃)
福山城は1622年、初代福山藩主、水野勝成が「西国の鎮衛」として築城した。
中でも歴史的価値が高いのが、現存する櫓で日本最古級とされる国重要文化財の「伏見櫓」だ。
かつて京都にあった伏見城から移築されたとされ、櫓内部の刻字や文献が見つかっている。
福山市は伏見櫓に加え、同じく伏見城から移築されたとみられる国重要文化財の「筋鉄御門」などの国宝化を目指している。この2棟は1945年8月の福山空襲を奇跡的に耐え抜いた貴重な建造物でもある。
そんな歴史の深い福山城郭内を全て貸し切れるのが、福山市が取り組む「福山城キャッスルステイ」だ。
1泊2人で132万円からという豪華なプラン。普段は公開されていない伏見櫓の内部を見学でき、天守はナイトラウンジとして利用し、地元名産の福山琴の演奏などを楽しめる。
城の宿泊使用を巡っては、旅館業法や食品衛生法、建築基準法などを一つ一つクリアした。
2022年の実証実験を経て、今年7月に本格的な開業に至った。
全国で機運の高まる文化財の活用。福山市の榊拓敏文化財担当課長は「活用の主流が『見せる』から『体験』に変わってきている。宿泊という体験を通して文化に触れてほしい」と語った。