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「九州男児」に孫育て休暇じわり広がる 喜びや苦労体験、職場で応援する風土へ

共同通信 2025年2月5日 7時2分

 男性が家事育児に費やす時間が少ないとの統計もある九州で、社員が孫の世話に利用できる休暇制度がじわりと広がっている。祖父母世代が育児の喜びや苦労を実体験することで、職場全体で子育てを応援する風土に変革していく狙いがある。専門家は「上司が大変さを理解すれば、若い世代が休みやすくなる。効果は大きい」と歓迎する。

 「帽子かっこいいね。ママが買ってくれた?」。2024年1月の昼下がり。福岡市の保育園で当時3歳だった孫息子を迎え、帰路に就いたのは九州電力の池辺和弘社長だ。この日は大手電力として初めて導入した「孫育休暇」を自ら体験した。

 孫育休暇は、育児や出産への立ち会いなどが対象となる社長肝いりの休暇制度で、小学3年までの孫が1人いた場合は年5日、2人以上は10日まで休める仕組みだ。

 九電では管理職の9割を男性が占める。この世代が親だった時代は子育てを理由に会社を休む人は少なかった。そこで、50~60代になった彼らが育児に関わりやすい仕組みをつくり、理解を深めてもらおうと制度を導入した。

 九電によると、2024年11月までに予想を上回る72人が孫育休暇を取ったといい、池辺社長は「子育てはすごく勉強になる。マネジメント能力がつき、時間を有効に使う訓練にもつながる」と仕事の質の向上にも役立つと太鼓判を押す。

 同様の動きは九州全体に浸透しつつある。佐賀銀行は孫の予防接種などに付き添うための看護休暇制度を2024年7月に新設。肥後銀行(熊本市)は孫の学校行事への参加も可能な休暇を設け、TOTO(北九州市)は孫の看病などを対象にした休みをつくった。自治体では、大分市が出産を控える娘の病院に付き添える仕組みを整えた。

 総務省の2021年の社会生活基本調査によると、6歳未満の子どもを持つ男性が家事育児に1日当たりに費やした平均時間は、九州では宮崎がトップで全国10位だった。一方、長崎は42位、熊本は45位、大分は46位と、九州各県は下位を占める。

 関西大学の多賀太教授は「地域の大企業が孫育休暇のような取り組みを実践していけば、改善していく可能性がある」と指摘。一方、子どもや孫がいない社員らに不公平感が生まれないよう「取得者だけでなく(取得者が所属する)部署にもメリットがあるような仕組みも必要だ」と指摘した。

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