アジ、イサキ、ハリセンボン…。「天然のいけす」とも呼ばれる富山湾の魚を、熱帯魚のように観賞用として展示する取り組みを富山市の会社が手がけている。水揚げされたものの、形や大きさなどの理由で流通ルートに乗らない「未利用魚」を活用し、商業施設やホテルにアクアリウムの水槽を設置。会社代表は「食べるだけじゃない、富山湾の魚の魅力を知ってほしい」と話す。(共同通信=堤悠平)
会社は「ユウ・アクアライフ」。代表橋本勇一さん(53)によると、もともとアクアリウムのプロデュースをしており、2018年から富山湾の魚の展示を始めた。今は富山県内4カ所に水槽が置かれている。
富山市内の商業施設「フューチャーシティファボーレ」の水槽には、富山湾産の魚が悠々と泳ぐ。併設のモニターには海中の映像。施設の担当者は「子連れの方が特に興味を持ってくれている。美しい富山湾のアピールにもなり、地域密着の取り組みだ」と手応えを口にする。
一般的なアクアリウムは、魚の多くが海外から輸入される熱帯魚だ。橋本さんは、博物館と連携し県特産のホタルイカの展示などを手がける中で「富山にも面白い魚がいっぱいいると気づいた」という。漁協を回り、未利用魚を無償で提供してもらうことになった。
展示では「全体のイメージとストーリー」を意識する。水槽には岩や海藻などを模した装飾を加え、照明の色や当て方も工夫。けんかするなど魚の組み合わせに難しさがあるが「地元の魚を格好良く見せ、最高のパフォーマンスを発揮させたい」と語る。
将来的には漁師の収入になるよう、展示用の魚を買い取ることも検討している。橋本さんは「富山は魚が有名だが、普段スーパーに並ぶ魚が泳いでいる姿を見る機会は少ない。展示を通し、地元漁業の活性化や、漁師の方々の活動をもっと知ってもらうことを目指す」と意気込んでいる。