経済が低迷する中国で、農村から都市部に来た「農民工」と呼ばれる多くの出稼ぎ労働者が居住環境の劣悪な地下室での生活を強いられている。雇用・医療保険といった社会保障の枠外の人も多く、職を失えば「絶望しかない」との声も。無差別に市民を襲う事件が頻発しており、当局は不満を募らせる農民工の「暴発」を警戒する。
北京市中心部の集合住宅の地下1階。狭く薄暗い通路の両側に塗装がはがれ摩耗したドアが並ぶ。ひもでつるされた洗濯物が通路をふさぎ、すえた異臭が鼻を突いた。夜は氷点下まで冷え込むが暖房はない。
「老いた父母や子どものために頑張るしかない」。河北省から来て地下に住み始め十数年になる清掃員の女性(50)は毎月、家族に仕送りを続ける。月3800元(約8万円)稼ぎ、地下室の家賃100元を含む生活費は千元以内に抑える。
窓のない部屋で一緒に暮らす外壁塗装工の夫(53)は雇用主と正式な契約を交わしておらず、雇用・医療保険にも加入していない。女性は「病気やけがをすれば今の生活も終わってしまう」と顔をしかめた。