安心して子どもたちが楽しく過ごせるよう、安全対策の徹底を求めたい。
こども家庭庁は、プール活動を実施している全国の放課後児童クラブ(学童保育)のうち、事故防止のマニュアルを策定していたのは、37%の1597施設だったとの調査結果を公表した。
夏に人気のプール遊びも、一歩間違えると重大な事故につながりかねない。6割超が安全を守るマニュアルを定めていなかったという実態は、運営体制の不十分さと危機意識の低さを浮き彫りにしたと言えよう。
調査は7月、長浜市で学童保育の活動中に小学1年の男児がプールでおぼれ死亡した事故を受けて実施した。
当時、45人の児童を4人の引率者で監視していた。亡くなった男児は身長約120センチで、背丈とほぼ同じ水深の場所で発見されたという。水に入り、わずか10分ほどの出来事だった。
運営側は児童の泳力を把握しておらず、監視体制についての市との取り決めも、事故防止のマニュアルもなかったという。
どうして男児が死に至ったのか。事態の重みを受け止め、原因究明と再発防止のための検証を急ぐ必要がある。
こども家庭庁は調査結果を受け、監視体制や職員研修、自動体外式除細動器(AED)の設置場所確認など緊急事態の対応についてマニュアルを作るよう、自治体を通して運営事業者に通知した。
ボランティアも含めた全職員に周知するほか、使用するプールの状況や児童の泳ぐ力を事前に把握することも求めている。
身長や技量に応じてライフジャケットを着用するといった配慮や、異変がないかの確認などで具体的な対策を進めたい。
学童保育は共働き家庭の増加に伴いニーズが増える一方、指導員は慢性的な人手不足となっている。特に夏休み中は預かる子どもの数が増える傾向にある。
泳ぎが苦手な子がプールに入る際は、監視者1人につき5人の子を見る態勢が望ましいとの専門家の指摘もあり、対応の負担は大きい。
運営側は安全を最優先し、水深の浅いプールを使ったり、水遊びのイベントで代替したりするなど工夫をしてほしい。
指導員は非正規雇用が多く、待遇改善が課題となっている。安心な学童活動には、財政支援策を含めた運営体制の強化と「質」の向上が求められよう。