京都府の西脇隆俊知事が、JR西日本に山陰線のダイヤを新型コロナウイルス禍で減らす前の便数に戻すよう要望した。南丹市の中学校では部活動の時間を短縮させるなど影響が出ているという。
滋賀県では、赤字経営が続く近江鉄道で2024年度から公有民営の「上下分離方式」を導入する。県や沿線市町は重くなる税負担に対する特例措置を国に求めている。
採算の厳しいローカル線をどう存続させるか。廃止して別の手段を導入するか。全国各地が悩みを抱える中、自治体と事業者、国が存廃について協議する新制度の運用が、10月から始まった。
地域の移動手段をどう守るかは過疎地を中心に切実な課題である。前向きに地域交通の将来像を描く先例となるよう、建設的な議論を求めたい。
新制度は、4月に成立した地域公共交通の再編関連法に基づき導入された。
自治体や事業者の申請を受けて国が「再構築協議会」を設置し、3年以内をめどに鉄道の存続かバスなどへの転換、上下分離方式への移行といった方針をまとめる。国は財政面でも支援する。
今月に全国で初めて、JR西が広島県と岡山県にまたがる芸備線の一部区間を対象に、協議会設置を申請した。
存廃にかかわる議論は沿線自治体が廃線を警戒して進みにくい課題があった。協議会は従来よりも国の関与を強め、再編を加速させる狙いだ。
芸備線を巡っても「自治体とJRの立場が乖離(かいり)しており、国の関与は意義深い」(伊原木隆太岡山県知事)との声が出ている。ただ、JR側から「廃線ありき」で押し切られるのではと地元の不信感も根強い。
協議は1キロ当たりの1日平均乗客数(輸送密度)が千人を下回る区間を優先するとしている。
京都ではJR小浜線(東舞鶴-敦賀)と関西線(加茂-亀山)が該当する。今のところ、京滋では協議会設置の動きはみられない。
優先する目安に加えて、新制度の協議の対象は輸送密度4千人未満の区間も含む。舞鶴線のほか山陰線や草津線の一部区間が入る。
国内では、過疎地で鉄道に代わるBRT(バス高速輸送システム)を導入し、本数や停車地を増やして利便性向上を試みるなど模索が続く。
地域の将来像を見据え、適した公共交通の姿について住民が主体となった議論が欠かせない。