京都府亀岡市千歳町の廣瀬家住宅主屋が、市内の民家で初めて国の登録有形文化財となった。建物が良い状態で維持されているだけでなく、個人蔵として市内最多レベルとなる5千点の史料も残る。8月に登録証が届き22代目当主の廣瀬正春さん(71)は「古いものを大切にしていくことを伝えていければ」と話している。
廣瀬家住宅主屋は木造平屋建て瓦ぶきで、建築面積は174平方メートル。専門家らは1843(天保14)年ごろに建てられたとみている。江戸時代、地元の江島里村の代官や庄屋を務めた当主が主屋に暮らし、隣にあった代官屋敷で執務したという。
史料は代々、定期的に虫干しを続けるなど維持管理に努めており、1596年の豊臣秀吉による太閤検地が最も古いという。丹波で大規模な一揆が起きた1787年の記録では、襲撃を受け柱が傷つき井戸も使えなくなったものの、親族や知人から多数の見舞いの品が贈られたことが記録で伝わっている。
今回の登録を受け廣瀬さんは「浮き沈みのあるわが家の歴史が続いているのは、親類縁者や地域の人の支えがあったから」と先人たちの営みに感謝する。建物や記録の維持管理には多額の費用がかかるが「歴史的な景観を守り、記録を残す大切さも伝えていきたい」と語る。
建物は現在も廣瀬家の生活空間のため一般の見学は断っている。