志ある先生たちが、心をすり減らしていく。そんな実態を変えなくてはならない。
2022年度に公立小中高校と特別支援学校で精神疾患を理由に休職した教員が、過去最多の6539人に上った。
近年は5千人前後で推移していたが、20年度からの2年間で急増した。22年度は前年度より642人、1割余り増え、全教員に占める割合は0.71%となった。調査した文部科学省は「深刻な課題」としている。
京都府は67人、滋賀県は62人。京都市は政令指定都市で4番目に多い89人だった。
何より見過ごせないのは、休職と病気休暇を合わせた割合が、20代をはじめ若い教員ほど高いことである。
若手教員が一人で悩みを抱え込まぬよう、孤立を防ぐサポート体制を厚くしたい。
大きな要因は、業務の多忙さにある。授業や教材研究のほか、新たな学習指導の研修、近年は新型コロナウイルスの予防対策も加わった。保護者らの要望や苦情への対応も負担になっているという。
子ども一人一人と向き合う時間が削られ、疲弊を深める状況は改めねばならない。
教員勤務実態調査(22年度)によると、小学校教諭の64.5%、中学校教諭の77.1%が、残業時間上限の月45時間を超えていた。
各教育委員会では「働き方改革」として、教員以外でもできる業務を事務スタッフが担ったり、電話対応を夕方以降は留守番電話に切り替えたりするなど、残業を減らす試みが続く。
保護者や地域の理解、協力が不可欠だ。教員の自宅への持ち帰り仕事が増えないよう、注意を払う必要もあろう。
現場の人を増やし、仕事量を減らすことが重要で、スムーズな復職につながる支援の拡充が急がれる。
だが、厳しい職場環境が敬遠され、教員のなり手不足は深刻化している。22年度の教員採用試験の競争率は全国平均で2.3倍と、過去最低を更新した。
教育の質低下につながり、子どもたちの学びにも影響が及びかねない。
民間企業への人材流出を防ぐため、文科省は24年度の採用試験の時期をこれまでより早めるよう都道府県教委に通知した。京都市ではあらかじめ多めに講師を採用する「プール制」導入などの対策に乗り出した。
さらなる抜本的な見直しで、「ブラック職場」のイメージを払拭(ふっしょく)してほしい。
公立学校の教員は残業代が出ず、月給4%分が「教職調整額」として支給されている。文科省は増額を検討しており、諮問機関の中央教育審議会は、調整額の見直しについて春に答申をまとめる予定だ。
「やりがい搾取」にならぬような環境整備が求められる。