Infoseek 楽天

京都にある平安時代の名刀に寄付6千万円 根強い刀剣ブーム「令和の勧進」驚きの成果

京都新聞 2024年3月7日 5時45分

 平安時代の名刀「髭切(ひげきり)」(重要文化財)の拵(こしら)えを製作しようと、所蔵する北野天満宮(京都市上京区)などのプロジェクト実行委員会が、クラウドファンディング(CF)で資金を募ったところ、6千万円近くが寄せられた。実行委は根強い刀剣ブームを背景に、当初想定した4倍の寄付金を得られた「令和の勧進」の成果に驚く。「多くの支援者の期待に応えたい」と気を引き締めている。

 髭切は、源頼朝らの祖先に当たる源満仲が作らせたとされ、その後、源氏代々に伝わったという。同時期の重文「膝丸(ひざまる)」(大覚寺蔵)と兄弟刀といわれ、ファンは「兄者」と呼ぶ。

 髭切は1880(明治13)年、北野天満宮へ奉納されたが、鞘や柄といった拵えはなかった。実行委は天満宮が、伝統工芸の職人集団で製作を担う「KOGEI Next」、広報などを行う京都女子大(東山区)とともに設立した。2027年の祭礼「半萬燈祭」に奉納するという。

 うれしい誤算は「令和の勧進」の成果だった。昨年11月29日、CFサイト「キャンプファイアー」で1500万円を目指して募集を始めると、応募が殺到し、正午からわずか1時間半で目標額を突破した。締め切りの今年1月25日までに5780万円を超え、支援者は2262人に達した。

 実行委は金額以上に支援者の多さに驚いており、天満宮の東川楠彦禰冝は「これほどの輪が広がったことを大切にしたい」と感謝する。刀剣を擬人化したゲーム「刀剣乱舞」などを契機に盛り上がった刀剣ブームが大きいが、「北野天満宮で毎年、刀剣展を開いて刀剣信仰を広めてきた活動の影響もあるかもしれない」(東川さん)とみる。

 刀剣の拵えを新調して神社などに奉納する風習は古くからある。天満宮では豊臣秀頼や加賀藩・前田家の先例があり、その時代ごとの技術が投影された。今回もかつてにならい、廃家電や携帯電話に含まれる「都市鉱山」の金属資源や天満宮の古材を活用しながら、現役の工芸職人が腕をふるうことにした。目標を上回った分の支援金は、こうした拵えの素材や意匠の工夫に充てるという。

 祭神の菅原道真は学問の神として名高いが、実は武士が刀を納めた「武神」の側面もあるという。実行委は「天神さんと天満宮を好きになってもらうことが目標だ。お参りに来る人が増えることが、神社や宝物を守ることにつながる」としている。

この記事の関連ニュース