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「セレンタンパク質」多いがん患者、予後が悪い傾向に 京都大学医学研究科などの研究グループ発表

京都新聞 2024年6月12日 18時0分

 抗酸化作用を持つセレン元素を含むセレンタンパク質が多いがん患者は予後が悪い傾向にある、と京都大学医学研究科などの研究グループが発表した。予後の悪いすい臓がんなどで、副作用の少ない抗がん剤開発につながる可能性があるという。英科学誌ネイチャー・ストラクチュアル・アンド・モルキュラーバイオロジーに12日掲載された。

 セレンは抗酸化タンパク質に取り込まれ、抗炎症作用や解毒をもたらすヒトに必須の元素だが、過剰になると毒性を持つことが知られている。

 研究グループは今回、25種類のセレンタンパク質に細胞死を抑制する働きがあることを確認した。これらのうち、「PRDX6」と呼ばれるセレンタンパク質は最も抑制効果が高く、他の種類のセレンタンパク質の合成も促す役割があることも分かった。

 がんとの関連を調べたところ、すい臓がんと肝臓がんでは、がん組織にPRDX6が多いほど患者の生存率が低くなる傾向にあることも明らかになった。PRDX6ががん細胞の耐性を強めるセレンタンパク質を増やすためとみられる。

 がん細胞からPRDX6をなくすと細胞死に至りやすく、マウスでの実験結果からも、PRDX6を標的とした阻害剤が副作用の少ない抗がん剤として期待できるという。

 研究グループの岩井一宏京大医学研究科教授は「すい臓がんはここ数十年間、(医療の進歩にもかかわらず)生存率はあまり向上していない。発見も難しいだけに、研究成果を有効な治療薬の開発につなげたい」と話している。

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