Infoseek 楽天

「地球の歩き方」×「月刊ムー」異色コラボの内容とは 京都・北野天満宮の「七不思議」など紹介

京都新聞 2024年5月13日 6時0分

 知らない世界の扉をひらく異形の国内観光ガイド-。そんなうたい文句の異色の旅行ガイド本「地球の歩き方 ムーJAPAN~神秘の国の歩き方~」が3月、発売された。海外旅行ガイドの定番「地球の歩き方」とオカルト雑誌「ムー」によるコラボ企画で、全国の不思議スポットがふんだんに収録されている。観光名所に加え、京都と滋賀も歴史ミステリーの宝庫。時には趣向を変え、まちなかの「謎」を巡ってみては?

 ともに創刊45周年を迎えた両誌がタッグを組むのは2年ぶり。前回の「世界編」では、ピラミッドの謎や未確認生物の目撃譚(たん)といった世界のミステリーを真正面から取り上げて話題を呼び、発行部数14万部のヒットとなった。編集担当の池内宏昭さん(53)は「混ぜるな危険、ではなく絶妙の相性だった」とにんまり。今回の「日本編」の制作もすぐに始まったという。

 デザインは通常の「地球の歩き方」と大きく変わらないが、ページをめくると「日本のピラミッド7選」「日本全国河童(かっぱ)出没マップ」などオカルト色全開の企画が目を引く。日本各地に残る伝承や逸話を基に、有名スポットが趣の違う切り口で紹介されている。

 例えば北野天満宮(京都市上京区)。菅原道真にまつわる怨霊伝説をはじめ、境内の各所にある「七不思議」に焦点を当てている。その一つが「立ち牛」の謎。道真の使いとされる牛の像は境内に多数あり、いずれも伏せている。ところが、本殿(国宝)の欄間の彫刻だけが唯一、起き上がった姿となっている。

 権禰宜(ごんねぎ)の白江秀宜さん(41)によると、1607(慶長12)年、豊臣秀頼が本殿を造営した際、すでに立ち牛が刻まれていたという。後世に数々の研究者がこの謎に挑んだが、白江さんは「牛の力強さを表現しようとしているとか、道真公が太宰府に送られたことを悲しんで地面を蹴っているとか諸説あるが記録はなく、謎のまま」と話す。

 通常の旅行ガイドでは紹介されないであろう場所も多数登場する。二条城の北側に位置する二条公園(上京区)の「鵺(ぬえ)池」がその一例だ。弓の名手源頼政が、近衛天皇の勅命で平安時代の都に出没したと伝わる妖怪「鵺」を射落とし、池で鏃(やじり)についた血を洗ったという伝説がある。本書は、近くの「鵺大明神」の祠(ほこら)や、鏃を収蔵する神明神社(下京区)にも触れている。池内さんは「かつての日本の都だけあって、日本史を彩る英雄や偉人にまつわる場所が多い」と京都の魅力を語る。

 同様に滋賀にも謎めいた場所が点在していると分析。京都の鬼門(北東の方角)を守護しているとされる延暦寺(大津市)をはじめ、坂本城跡(同)や安土城跡(近江八幡市)など交通の要衝として戦国武将らが築いた城、近江王朝を巡る古代史ミステリーが残る琵琶湖などを取り上げた。

 「ミステリースポットへの興味を入り口に、歴史的背景に興味を持ってもらえれば」と池内さん。制作に当たり、こだわったのは神秘的な場所の選定だけではないという。「廃虚や心霊スポットなどの紹介は控え、読者が安全に訪れ、無事に帰ってこられる場所を厳選しました」

 400ページ、2420円(税込み)。全国の書店で購入可。

 月刊ムー 「世界の謎と不思議に挑戦するスーパーミステリー・マガジン」をキャッチコピーとするオカルト雑誌。1979年に学研が創刊し、グループ再編に伴い、現在はワン・パブリッシングが発行する。UFO(未確認飛行物体)や超常現象、心霊などを扱う。愛読者は「ムー民」と呼ばれる。

この記事の関連ニュース