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社説:男女格差報告 障壁を取り除く努力を

京都新聞 2024年6月27日 16時0分

 ジェンダー平等に向けた日本の歩みの遅さが改めて浮き彫りになった。付け焼き刃でない格差解消の取り組みに、本腰を入れなくてはならない。

 シンクタンク「世界経済フォーラム」が各国の男女平等度を順位付けした「男女格差(ジェンダー・ギャップ)報告」を発表し、日本は146カ国中、118位で、先進7カ国(G7)の中で最低だった。前年の125位からわずかな上昇にとどまった。

 相変わらず特に遅れているのが経済と政治の分野だ。経済は120位(前年123位)と沈んだままで、政治は前年138位から上昇したものの113位だった。

 経済は、指標となる企業役員や管理職の比率の低さが響いた。

 政府は東京証券取引所の「プライム市場」の女性役員比率を25年までに19%、30年までに30%以上にするとの目標を掲げる。先ごろ決定した「女性版骨太方針」では、役員比率や登用目標の設定に関する調査を企業に行うとした。

 女性役員や管理職の登用が進まない原因は、候補となる女性が少ない面が大きい。家事や育児の負担の重さが女性に偏り、キャリア形成が進んでいない。責任の重さや仕事量の増加で、管理職を望まない女性も一定数いる。長期労働の見直しなどいっそうの働き方改革に踏み込むことが欠かせない。

 男女の賃金格差も是正の足取りが鈍い。国の調査では、フルタイムで働く男性の平均給与が月35万900円に対し、女性は男性の7割だった。ポストや業務を任せる上で、女性を低く見る偏見が企業や業界に根強いのではないか。

 日本のみが義務付ける夫婦同姓は、国連から女性差別との勧告を何度も受けてきた。経団連は今月初めて、選択制夫婦別姓の導入を政府に提言した。海外で活躍する女性からは、旧姓の通称使用ではビジネスに支障が出るとの声が強まっている。

 だが、家族が同じ姓で暮らすのが「日本の伝統」と固執する自民党の強硬な反対派に引きずられ、議論は先送りされている。

 政治で女性議員の割合が伸び悩むのも、多様性に背を向ける自民の姿勢が壁となっている。自民は昨年、衆参両院議員で12%の女性議員の割合を30%に引き上げる10年計画を作ったが、前倒しで実現する行動を求めたい。

 女性が自身の持つ力を十分に発揮できるよう、障壁を取り除く地道な努力を、政党や企業は積み重ねていくべきだ。

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