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社説:障害者ホーム 悪質業者の排除が急務

京都新聞 2024年6月28日 16時0分

 地域で安心して暮らしたい。そんな障害者や家族の願いを踏みにじり、食いものにしてきたのか。

 障害者向けグループホーム(GH)の運営会社「恵(めぐみ)」に対して、厚生労働省が事業所指定の更新を認めず、順次打ち切る「連座制」を適用すると発表した。障害者福祉施設の大手事業者では初という。

 愛知県を中心に全国77カ所の施設で、総額約3億円に上る食材費の過大徴収があった。実際は1人当たり月約8千円なのに約2万4千円を集めた例もあったという。提供したのは粗末な食事で、費用との差額を利益にしていた。

 虚偽の業務記録でサービス報酬も不正請求していた。いずれも組織ぐるみの悪質さで、言語道断というほかない。

 恵は12都県で104カ所のホームを運営している。京都市と大津市でも開所予定だったが、今回の問題を受け見送ったという。

 連座制が適用されるのは、愛知県などが指定を取り消す5カ所を除く99カ所。今後6年間で全て運営できなくなる。利用者が代わりの行き場をなくさないよう、国と関係自治体の緊密な連携による支援を求めたい。

 GHは、知的障害者や精神障害者が少人数で共同生活を送る住まいで、食事や入浴などの援助を受けられる。恵が急拡大させたのは重度障害者向けで、入所施設からの「地域移行」の受け皿として国が2018年度に制度化した。

 報酬加算の拡充もあり、高い利益率に目を付けた業者の参入が相次いだ。実績や経験が不十分でも書類で要件を満たせば開設でき、研修の義務もなかった。

 行政の監視や指導も行き届いていなかった。恵のケースでは、人員基準を満たすよう偽装した書類を見抜けず、食材費の過大徴収が確認された後も、今回の処分までに約2年かかった。

 質より量の増加を優先した国と、監督権限を持つ自治体の責任は大きい。

 共同通信の昨年の調査では、重度障害者向けGHの2割で虐待疑いの通報があった。自治体の3割は恵以外の施設でも「問題がある」と懸念を示した。

 精神障害者を対象にした訪問看護では、滋賀など18都県で運営する最大手の事業者が、報酬を過剰請求した問題が判明している。

 悪質業者の排除に向け、参入基準や運営能力の適正化、第三者によるサービスの点検と評価を取り入れ、質の担保につなげる実効性ある対策が欠かせない。

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