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社説:能登地震から半年 進まぬ復旧、人手が足りない

京都新聞 2024年6月30日 16時0分

 まるで静止画を見ているようだった。

 1階が押しつぶされた木造の民家が、でこぼこに割れた道路に沿って並ぶ。工事業者やボランティアの姿はない。

 石川県輪島市の中心部から東に20キロほど離れた山あいの集落。先週末に訪ねると、元日から時が止まったままであった。

 能登半島地震は、あすで発生から半年となる。生活再建はなお途上で、震災前から人口減に直面していた過疎地では、復興どころか復旧のめどさえ立たない苦境が続く。

 石川県内の犠牲者は、6月下旬までに70人が災害関連死と認定され、計299人に上る。平成以降では東日本大震災、阪神大震災に次ぐ多さだ。

 関連死の認定申請はさらに増えている。避難先での感染症、心身にかかる負荷などが原因で、高齢者が体調を崩した事例が目立つ。停電した特養ホームで急性心不全となった人もいた。防ぐことはできなかったのか。徹底した検証を求めたい。

 今も体育館などの避難所に約千人が身を寄せ、1.5次、2次避難所にも計約1200人が残っている。仮設住宅など落ち着ける住まいの確保を急ぐとともに、高齢者の見守りや熱中症対策など健康と生活の支援に注力する体制が欠かせない。

 半島を南北に貫く「のと里山海道」は7月中旬、全区間で対面通行が可能になる。ただ、仮復旧の路面は段差が多く徐行を余儀なくされる。断水はほぼ解消したとするが、水道管から住宅や事業所に引き込む工事は進んでいない。

 建物の公費解体も遅れが目立つ。約1万9千棟の申請に対して完了は600棟余り(6月中旬時点)にとどまる。被災地では屋根にブルーシートをかけた建物が数多く残り、台風や大雨、余震で倒壊するリスクが高まっている。

 先週、滋賀県庁を訪れた能登町長は、応急復旧は一段落としながらも、「業者不足で解体や修繕が進まない」と語った。

 京都、滋賀をはじめ自治体の緊急支援は5~6月に相次いで終了したが、ボランティアを含め現地の人手は全く足りていない。ボランティア不足は、石川県が当初「来ないで」と発信した影響も指摘されている。

 国はあす、省庁横断で職員150人規模の支援拠点を現地に開設する。政府の復旧・復興支援本部の会議で、岸田文雄首相は「政府一丸となって全面的にバックアップする」と述べた。

 半年もたって拠点を置くだけにとどまらないよう、ニーズを掘り起こし、官民挙げて支援の手を尽くさねばならない。

 岸田氏は開設に合わせて被災地を視察する。政権固守のためのアピールではなく、復旧すらままならない過疎地の現実を直視し、復興への道筋を感じられる対策を打ち出すべきだ。

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