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京都で国内初の鳥インフル大感染から20年「必ず起きると想定して対策」業者と現地の今

京都新聞 2024年5月17日 8時30分

 京都府丹波町(現京都府京丹波町)の養鶏場「浅田農産船井農場」で2004年、鶏が大量死し、鳥インフルエンザ国内初の大規模感染が起きて、今年で20年になる。全国的に鳥インフルの感染は今も続く。昨シーズン(2022年秋~2023年春)は過去最多の84件が発生し、卵の価格が高騰した。養鶏農家は今、どんな対策を講じているのか。京都府養鶏協会会長を務める「みずほファーム」(京都府京丹波町)の桑山直希社長(53)に聞いた。

  ―20年前の鳥インフル騒動を今、振り返ると、どう感じますか。

 「コロナがはやり出した4年前と騒ぎ方は似ていたのでは。未知のウイルスへの恐れもあり、コロナの時は最初に集団感染が出たクルーズ船やライブハウスを、まるで悪い所のように見る人もいた。浅田農産さんは鶏が大量死していても報告しなかったのは明らかに悪かったけど、感染はコロナ同様、どこで、いつ起きてもおかしくなかったのでは」

 ―鳥インフルの予防で今、力を入れていることは。

 「養鶏場に消石灰をまいて消毒に努めたり、ウイルスを運ぶ恐れのある野鳥や小動物、虫が鶏舎に入らないよう網や遮断機を付けたり、20年前と基本は変わっていない」

 「大切なのは地震などの災害と同じで、いつか必ず起きると想定し、発生時の対策をしっかり念頭に置いておくこと。そうしないと後手になる。今はいつもより少しでも鶏が多く死んでいたら、例えば、みずほファームでは育てている7万5千羽のうち10羽以上が死んでいたら、京都府家畜保健衛生所にすぐに連絡し、検査してもらうよう徹底している。鳥インフルが発生した各地の養鶏場とも情報交換しているが、通報や初期対応が遅れるのが怖い。鶏の殺処分をはじめ、のちの補償の算定条件にも響いてくる」

 ―コロナが弱毒化したように、鳥インフルも変化しているのか。

 「鳥インフルも弱毒化する一方、コロナ同様、感染しているのかが分かりにくくなった面がある。以前は冬に感染が多く、春になると安心していたが、今年は4月末でも出た。衛生対策が進む最新鋭の養鶏場でも感染例がある。予防は尽くすが、やはり感染が出た時のことも考えるのが現実的。京都府内では浅田農産以来、20年も感染が出ていないのが強運といえる」

 ―そうした中で普段から心がけることは。

 「家畜保健衛生所など行政をはじめ、いろんな信頼関係を築いておくこと。昔なら行政の指導をうるさく感じる養鶏家もいただろうが、上下関係とかでなく、何でも教えあったり、連携したりできる関係になれば」

 「消費者からも養鶏家が見えることが大切。僕は『頭の形が卵みたい』と言われることもあり、自分の写真を載せた自社看板を道沿いに出したり、直売所に力を入れたりしている。こんな人たちが鶏を育て、卵を作っていると知ってもらい、信用につなげたい」

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 くわやま・なおき 大阪府貝塚市出身。「別寅かまぼこ」の創業家の家系に生まれ育ち、同社に勤務。妻の実家がグループで営んでいた「みずほファーム」の経営を託され、2013年から養鶏業に携わる。2018年から京都府養鶏協会会長。

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 浅田農産船井農場の跡地は今、映画やドラマの撮影に使える「京丹波町ロケーション施設」として町が撮影誘致に力を入れている。

 町は2004年、廃業した浅田農産から土地(4.7ヘクタール)の寄付を受けた。鶏舎を解体し、2016年から同施設として活用している。

 炎上シーンも撮影できる広大さをアピールし、綾瀬はるかさん主演の映画「本能寺ホテル」(2017年)をはじめ、時代劇などの撮影に使われてきた。

 今年も大作ドラマの撮影が決まった。「ロケが誘致できれば飲食や宿泊など経済効果は大きい。20年前は悲しい出来事だったが、今後は町をPRできる場所として仕掛けを強めていきたい」(町商工観光課)としている。

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