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社説:災害時の「受援」 支えてもらう体制の整備も

京都新聞 2024年7月8日 16時0分

 災害の被災地に他地域の自治体が職員を派遣し、現地の生活再建を手伝う取り組みが定着しつつある。

 能登半島地震の被災地にも、京都や滋賀をはじめ全国から多くの応援職員が入り、被災した自治体の業務を支えている。

 避難所の運営、支援物資の受け入れや配布、災害廃棄物の処理、罹(り)災証明書の発行など自治体の仕事は多岐にわたる。現地職員の多くが被災者となる中、応援職員による支援なしに暮らしの立て直しは進まない。

 職員派遣の実績を積み重ねると同時に、自治体が強化しておきたいのが、応援を受け入れる時に備えた体制だ。「支え手」として活動した視点を生かし、「受け手」の立場で検証を重ねてほしい。

 応援職員を受け入れる際の手順を盛り込む「受援(じゅえん)計画」は、国が都道府県や市区町村ごとに定めるよう求めている。法律では義務化されていないものの、2011年の東日本大震災で、全国からの支援を十分に生かせなかった経験を踏まえて重要性が指摘されてきた。

 昨年6月時点では全都道府県が計画の策定を終えているが、市区町村では24%にあたる429自治体が定めていなかった。未策定は京都府内で全市町村の46%にあたる12市町、滋賀県内では26%の5市町だった。

 異常気象の常態化や巨大地震の発生が危ぶまれる一方、策定できていない自治体からは「必要性は理解しているが、人員不足で着手できない」との声も多い。計画づくりのノウハウや人材の提供など、国や都道府県の後押しを求めたい。

 すでに計画がある自治体にも、状況の変化や漏れがないかを洗い出し、実効性を高めていく取り組みが欠かせない。有効なのが、被災地で実際に活動した応援職員たちの声だろう。

 能登半島地震で現地に赴いた滋賀県や県内市町の職員は、帰還後の研修会で、応援職員の執務や寝泊まりのスペースが十分になかったことや、受け入れ側の担当職員がいなかったことなどを報告。県内でも対策を検討する必要性を提起した。

 被災時は机上での想定を上回ることが起こりうる。こうした経験を共有し、定期的に計画を更新したり、訓練を重ねたりして災害対応力の向上につなげる必要がある。

 行政だけでなく、住民も災害に備え「受援力」を高めたい。被災直後の避難生活や生活基盤の復興など、あらゆる場面で外部の人たちの支えが要る。

 被災地に駆けつけるボランティアの力を生かすには、日頃から支援が必要な人の所在やニーズを確認しておいたり、地域でボランティアの窓口となる人を決めたりしておくと、受け入れが円滑に進む。自治体の受援計画に、地域ごとの取り組みを入れるのも効果的ではないか。

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