京都市右京区の嵐山公園に建設途中の鵜(う)小屋が放置された問題で、鵜飼いを手がける嵐山通船(右京区)の前社長が株主に虚偽の説明をし、業者と鵜小屋の建設工事契約を結んで同社に約8千万円の損害を負わせた疑いがあることが8日、関係者への取材で分かった。同社は、前社長を特別背任の疑いで刑事告訴する方針で京都府警に相談している。
同社や京都府によると、前社長は2019年、嵐山公園内で鵜小屋を建設するため、自身が理事を務めていた一般社団法人「嵐山鵜飼観光文化振興協会」(解散)の名義で、府に設置許可を申請した。
関係者によると、前社長は18年ごろ、同社の株主総会で、同社が鵜小屋建設の費用を負担しないと説明していた。しかし、19年12月、株主らに秘して、同社を発注者とする鵜小屋建設の工事契約を京都市内の造園業者と約7700万円の請負代金で結び、同社に損害を与えたという。
嵐山公園の鵜小屋を巡っては、前社長が20年に経営悪化などを理由に辞任したことで事業が頓挫。同社と協会の双方は鵜小屋の所有権を否定していた。その後、建物は放置されて景観の悪化を招き、京都府が今年2月、行政代執行により解体、撤去した。